PEG化タンパク質は生体内安定性が高く優れた医薬品として期待されている。しかし、タンパク質のPEG修飾反応では複数のアミノ酸残基が同時に反応するために、PEG化タンパク質は修飾数・修飾位置の異なる異性体混合物として生成する場合がある。またPEG鎖の修飾位置によっては生理学的活性の低下することもあり、活性に影響しない特定のアミノ酸のみが修飾されたPEG化タンパク質のみが得られることが好ましいが化学的に修飾位置を制御することは難しく、異性体を複数の分離精製手法で分離する方法が提案されているが修飾数異性体の分離は達成可能であるが修飾位置の異なる異性体を分離することは未だ困難である。本研究では修飾位置異性体の分析に可能なイオン交換クロマトグラフィーを用いてPEG化タンパク質修飾位置異性体の分離を達成するために、各種イオン交換担体における分離機構と移動現象の解明と分離手法の確立を試みた。PEG化タンパク質修飾位置異性体のPEG鎖の修飾位置および各異性体の保持係数との相関関係から被修飾アミノ酸残基の表面露出度に応じて位置異性体の保持係数が低下することが明らかとなった。さらにイオン交換担体における保持機構におけるPEG化タンパク質の立体構造の関係を明らかにするために、直鎖状のバイオポリマーであるDNAをモデル分子として用いた。この結果、イオン交換担体との相互作用に直接寄与しない部位に修飾した場合においても保持係数は低下しており局所的な構造変化であっても分離機構に大きく影響する可能性が示唆された。
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