研究課題/領域番号 |
26820367
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
跡部 哲士 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40586468)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 同定 / 衝撃荷重 / 複合材料 / 異物衝突 |
研究実績の概要 |
本研究課題である「実験的荷重同定法を用いたCFRP構造物の動的応答の推定法の開発」は,異物が衝突した際のCFRP構造物の動的応答を,構造内の複数点で計測したセンサ応答から推定する手法の確立が目的である.本手法は,異物衝突により構造物に作用した衝撃荷重をセンサ応答より同定する作業と,その同定荷重を用いて構造物の動的応答を推定する作業の二つによって構成される. 平成27年度は「構造物に作用する荷重の同定法」および「同定荷重を用いた動的応答推定法」の妥当性を実験により検証した. まず,「構造物に作用する荷重の同定法」の実験では,2軸ひずみゲージを貼付したCFRP積層板をインパルスハンマで打撃し,得られた計測情報から衝撃の作用位置・荷重履歴を同定した.なお,本研究では,衝撃荷重とセンサ応答を関係づける実験的変換行列に基づいた同定法を採用している.衝突する異物の大きさ・質量・剛性などが同定精度に与える影響を明らかにするため,大きさ・質量が異なる二種類のインパルスハンマを用い,剛性の異なる複数の先端チップを装着して同定実験を行った. 続いて,「同定荷重を用いた動的応答推定法」の実験では,衝撃荷重とCFRP積層板の面外変位を関係づける実験的変換行列を作成し,任意の衝撃が作用したときの面外変位の分布を変換行列と計測荷重を用いて推定可能か検証した.また,推定した面外変位からKirchhoffの平板理論に基づいてひずみの推定値を求め,ひずみゲージより得られた計測値と比較した. 平成27年度の研究成果は,これまでコンピュータによる数値実験でしか示せていなかった「構造物に作用する荷重の同定法」および「同定荷重を用いた動的応答推定法」の妥当性が実験でも確認されたことである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では,本手法において重要な二つの要素である「構造物に作用する荷重の同定法」および「同定荷重を用いた動的応答推定法」の妥当性の検証を数値解析(平成26年度に実施)と実験の両方で行うことが平成27年度までの目標であった. 本年度の研究活動では実験による検証に従事した.当初の計画との相違点をあげると,「構造物に作用する荷重の同定法」の実験で多点衝撃を扱わずに,大型インパルスハンマによって作用させた分布荷重で検証を行ったことである.実際の異物衝突で作用する荷重は構造物に点ではなく面で作用すると考えられるため分布荷重の同定に変更した. 平成27年度に計画していた「荷重同定法および動的応答推定法の実験による検証」を遂行できており,その成果も十分に得られていることから,本研究は順調に進捗していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,当初の予定どおり,これまで個別に実証した「構造物に作用する荷重の同定法」および「同定荷重を用いた動的応答推定法」を組み合わせて「実験荷重同定法を用いたCFRP構造物の動的応答の推定法」を確立し,その妥当性および精度を実験により明らかにする.また,課題の最終年度につき,研究成果のまとめ作業にも注力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度遂行した実験において,一部の消耗品の購入量について当初の計画と差異が生じたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度分として請求した助成金と合わせ,今後の実験に必要な計測装置の購入やひずみゲージなどの実験消耗品の購入に使用する予定である.
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