研究課題
本研究の最終的な目的は、研究者独自の手法「液体燃料を用いた液滴パージ法(燃料液滴パージ法)」を用いてパルスデトネーションエンジン(PDE)の作動周波数(推力密度)のオーダーを1桁向上させることである。初年度は、第一の課題である「液体燃料(エチレン)を用いた300 HzのPDE作動による燃料液滴パージ法の実証」に特化した実証実験を行った。実証実験では、ガスエチレン-純酸素を爆発性混合気として、液体エチレンをパージ物質として用いた。内径10 mmで全長の異なる三種類のデトネーション管(300,400,510 mm)を用いた100 Hzのバルブレスパルスデトネーション作動を試みた。その結果、間欠燃焼が確認された全ての条件で、純酸素燃焼時の理論デトネーション伝播速度の110 ± 4%となり、燃料液滴パージ法によるPDE作動を実証した。また、PDE作動に必要な液体エチレンの最小液滴噴霧量は、デトネーション管長さで決定する圧力プラトー時間(閉管端で高圧既燃ガス状態が維持される時間)における液滴蒸発量に強く依存していることが明らかになった。本研究成果によって、燃料と純酸素のみを用いたPDEシステムが構築可能であることが実証された。PDE作動させるための最小液滴噴霧時間は0.75 msでありPDE1サイクル当たりの時間(10 ms)に対して十分短かい。そのため、目標作動周波数である300 Hz(3.33 ms)も十分実現可能であると考える。
2: おおむね順調に進展している
初年度の主な課題である「提案した燃料液滴パージ法の実証」を100%達成した。100HzでのPDE作動は、目標作動周波数300 Hzに対して達成度33%である。しかしながら、燃料液滴噴霧量の最小化は、主に燃焼器全長で支配される特性時間(プラトー時間)に支配されていることが明らかになっっており、本実験結果から、300 Hz作動も十分可能であると考えられる。初年度は、混合気質量流量の制約によって300 Hz実験を行っていないため、供給システムの強化が必要である。
本年度の課題は、「既燃ガスのパージ過程および燃料蒸気と酸化剤の混合過程のメカニズムの理解」および「液体燃料供給量・混合方式の最適化(モデル化)」である。前者に対しては、300-500 Hz程度の高周波数作動実証と並行して、イオンプローブおよび高速度カメラを用いた燃焼器内可視化実験によってパージ機構の解明を行う。既に、初年度において、既燃ガスパージに失敗した条件での大まかな自着火位置・時間を特定しており、高精度化する。また、蒸発した燃料と酸化剤との混合・両論混合気の生成では、1)燃料リーン混合気と蒸発燃料との混合、2)燃焼器側面からの純酸素供給・混合の2つの手法を試みる。後者に対しては、デトネーション遷移距離・時間の最小化および推力測定実験による比推力測定実験によって最適化する。また、慶応大学松尾亜紀子教授が行っている液滴パージの数値解析との相互比較を行う。
燃料液滴パージ法の実証に特化した実験を行ったため、計画していた可視化用光学装置および高周波数作動用供給システムの購入費を27年度に繰越した。
可視化用光学装置および高周波数作動用供給システムの購入に当てる。
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Transactions of the JSASS
巻: 58 ページ: 193-203
10.2322/tjsass.58.193
Combustion Science and Technology
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10.1080/00102202.2014.965300
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