研究課題
デトネーション波を利用したエンジンは高い熱効率、自己圧縮燃焼による圧縮機構単純化、極超音速燃焼による燃焼器ダウンサイジングが実現可能だと考えられている。近年ではAerojet-Rocketdyne(米国)、Air Fore Research Laboratory(米国)、MBDA(フランス)に代表される企業・研究機関を中心に精力的に研究が進められており、デトネーションエンジン研究は激しい競争下にある。デトネーションエンジンの自立作動は実用化へのブレイクスルーであり、パルスデトネーションエンジン(PDE)の繰り返し周波数を気体力学的上限値まで増加させることが必須である。本研究の最終目標は、独自の手法である燃料液滴パージ法を用いて従来の繰り返し周波数を1オーダー向上させることである。本年度、新たにパージガスを必要としない準バルブレスPDEを提案した[特願2015-251952]。本PDEでは、酸化剤は電磁バルブや回転バルブなどの機械的なバルブ機構を必要としないバルブレス方式で燃焼器に供給される。バルブレス方式では、デトネーション波によって生成した既燃ガスの圧力が一時的に酸化剤供給圧力よりも高くなることでガス供給を停止する。一方、液体もしくは超臨界燃料は燃焼器側面からインジェクタで適切なタイミングで噴霧され、酸化剤と混合することで爆発性混合気を生成する。ガス酸素-液体エチレンを用いた実証実験を実施し、これまでに800Hzの高周波数作動を達成し、従来の作動周波数を1オーダー向上させることに成功した。同時に、燃焼器軸方向に配置した多数のイオンプローブによりバルブレスPDEにおける既燃ガス逆流過程の時間スケールを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究1年目での達成周波数は100ヘルツであった。2年目には高周波数作動用として新たに実証機を製作し、本研究課題である高周波数作動実証に集中し実験を行った。その結果、燃料・酸化剤以外のパージ物質を用いない洗練された準バルブレスパルスデトネーションエンジン(PDE)によって800Hz作動を実証した。3年間の研究期間における最終目的(キロヘルツPD作動)に対して2年目までに80%を達成した点から、計画以上に進展したと判断した。
2年目に達成した800ヘルツは燃料噴霧インジェクタの応答性の限界である。そのため、より高応答インジェクタおよびそのドライバを導入する。また、酸化剤供給流量を現在の1.5倍まで増加させ、燃焼器内酸化剤充填速度を音速まで増加させる。以上、2点の改善を行い、1000ヘルツの繰り返し周波数を達成する。現在までに、デトネーション波によって生じる高圧既燃ガスの逆流によって繰り返し周波数が制限されてしまう問題が浮上した。燃焼器内の既燃ガス流動を検知可能なイオンプローブを多数配置し、数値計算との比較を行いながら燃焼器内部流動を理解・モデル化する。
2年目に達成したパルスデトネーション燃焼器の800ヘルツ作動は燃料インジェクタの応答性が原因であった。より高い繰り返し周波数を達成するため、3年目に新たに高応答インジェクタを導入するために研究費の一部を次年度に繰り越した。
これまで使用してきたソレノイド型インジェクタに変えて、ピエゾ型インジェクタの購入費用に充てる。
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