研究課題/領域番号 |
26820376
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
月崎 竜童 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (70720697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオンエンジン / プラズマ / レーザ誘起蛍光法 / スワールトルク |
研究実績の概要 |
本年度は研究初年度として、放電管によるXeの蛍光検出とイオンエンジンプルームへの適用を実施した。申請書に示したように, 3年計画でレーザー誘起蛍光法によるイオン旋回流速度測定を行う.外部共振器レーザーから出た光は複数に分岐され, 真空チャンバには光ファイバフィードスルーを通じて内部に導入される. 真空チャンバでは測定対象のスラスタが設置されており, レーザー光をプルームに照射する. 以下の原理によって速度は求められる. ①プラズマ中の電子のエネルギー準位間に等しい波長のレーザーをプラズマに入射することで, 電子を上準位に励起させる. ②上準位に励起された電子が, 違う波長の蛍光線を出し, 他の準位に落ちる. ③この蛍光線は, 粒子の速度に依存して波長がシフトする. (ドップラーシフト)放電管の蛍光線との波長シフトを求めることで粒子の速度を求めることができる. 平成26年度は、Xe放電管における蛍光線の検出に取り組んだ。これは既に申請者が在籍した小紫研究室で実績があり、ハードルは低く、アライメント調整が非常にシビアなレーザ誘起蛍光法の練度を上げるには、うってつけである。実際に、蛍光取得に成功した。 次にイオンエンジンのプルームに適用をおこなった。イオンエンジンのプルームのプラズマ密度は放電管に比べ2桁以上低く見積もられ、蛍光強度も小さくなる。また真空チャンバ内部のためアライメント調整が一段と難しくなる。放電管・イオンエンジンのいずれにおいても 834.7 nmのレーザーを用いて誘起させ, 541.9 nmの蛍光線を検出した. イオンエンジンプルームにおいては現在までに、蛍光信号になんらからの変化が見られるもののSN比が悪く蛍光のピークを検出できていない. 次年度はSN比の改良を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、放電管による蛍光取得と、イオンエンジンプルームへの適用だった。実際に放電管の蛍光取得には成功し、手法については修得することが出来た。イオンエンジンのプルームへの適用について行った。SN比が悪くドップラーシフトによる速度の測定にまでは至らなかったものの、プラズマの有無で信号の優位な差はでた。今後は、測定系の改良を進め、速度測定の実現を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
先行研究において、キセノンイオンにおけるレーザ誘起蛍光法は次の3例がある。 A.834.7 nmのレーザーを用いて誘起させ, 541.9 nmの蛍光線を検出. 6, 7 B.680.6 nmのレーザーを用いて誘起させ, 492.1 nmの蛍光線を検出. 8 C.605.1 nmのレーザーを用いて誘起させ, 529.2 nmの蛍光線を検出. 9 A.は比較的安価な半導体レーザーの出力範囲にあり申請者が博士課程の時に使用していたものがそのまま使用できるので、初回の実験はこれで行った。 C. は高価なdyeレーザーを用いる必要があり, 今回の計測では使用しない. 検出が難しい場合は, まずレーザ光の出力を増幅アンプで強め、蛍光線を強くするとともに、イオンエンジンプルームに由来する輻射光をバンドバスフィルタやモノクロメータで最大限カットし、波長変調分光法の第2高調波などを活用し、検出感度を最大限高める. それでも難しい場合, レーザー波長の切り替えを検討する. 半導体の追加購入で容易に切り替えが可能なB.を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
レーザ光増幅のため、100から200万円程度のアンプの購入が必要な可能性があるため。最大限繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の状況に応じて、レーザ光増幅のため、100から200万円程度のアンプの購入を検討している。
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