最終年度は、レーザ誘起蛍光法によるマイクロ波放電式イオンエンジンの旋回流速度計測をおこなった。光学系の改善やCEXをデコンボリューションによって排除することで、S/N比は大幅に改善した。これにより45km/sのイオンビームの中でも100m/s以下の旋回流速を優位に識別できる測定系を達成した。これを通常の磁場のイオンエンジン、磁場を反転させたイオンエンジンをそれぞれ計測することで、磁場の影響とグリッドのミスアライメントの影響を識別した。 従来の学説では90%がミスアライメント10%が磁場の影響とされていたが、本計測によって初めて磁場が主要因で80-90%、ミスアライメントがマイナーな要因で10-20%であることが判明した。さらに、加速グリッドより下流の放電室からの漏れ磁場によって旋回する影響は比較的小さく、大部分がイオンエンジンの内部に由来することが本研究を通じて初めて明らかになった。グリッドによるイオンビーム引き出しを経ても旋回流速が保存されることは、新しい知見である。 かかる成果を、当該分野でもっともインパクトファクターの高いInstitute of PhysicsのジャーナルPlasma Source Science and TechnologyにAzimuthal velocity measurement in ion beam of ion thruster using laser-induced fluorescence spectroscopyとして投稿中で、既にお返事をもいただき現在revision中である。また実験を担当した学生は2017年1月に開かれた学会で、優秀論文賞をいただいた。
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