カソード放電実験での電極配置を考慮したプラズマ解析を実施し、計算結果とプルームのプローブ測定結果の電子密度等の分布がほぼ一致することを確認した。一方で、イオン音波不安定性に起因する異常抵抗モデルが解に少なからずの影響を与えることが判明したため、妥当な解が得られるモデルパラメータ、及びモデリングの調査を行った。その結果、JPLのグループが提唱するモデルを用い、さらに電子の運動エネルギーを考慮したエネルギー保存式を用いることで、過去の先行研究で得られた結果に近い流れ場となることがわかった。本計算では実験的に得られた電流、電圧を入力すると、それが成立する流れ場が出力される仕様となっており、本研究で開発したコードを用いることで実験的に成立が確認された放電場のプラズマ諸量を推測できることが可能となった。ただし、高エネルギーイオンの生成にはさらなるモデルの改良が必要と考えられ、それについては今後の課題としたい。 得られた放電場からカソード本体への熱入力を算出し、それを境界条件とした熱解析も実施した。異常抵抗モデルパラメータに依存するものの、プラズマ解析で予測した電子源温度分布と熱解析結果は概ね一致することが確認され、本計算コードの妥当性を裏付ける結果が得られた。 実験では不安定な放電モードとされるプルームモードと、安定的なスポットモード間のモード遷移に着目し、オリフィス径が小さくなるにつれスポットモード領域が拡大することが確認された。アノード位置もモード遷移流量に影響を与えることが判明し、本研究で用いたリングアノードの場合、遷移流量が最小となるアノード最適位置が存在することが明らかとなった。これらの成果から、カソードの寿命評価等を単体試験で実施する際にはアノード位置等にも配慮する必要があり、それがスラスタとのカップリングを模擬する上で重要なパラメータとなり得ることが示された。
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