浮体を縦列に連ねて押航するプッシャー・バージ(PB)は、一般商船と異なる流体力特性や運動性能を持つと予想されるが、その実態は不明な部分が多い。本研究では、[1]PBの性能評価・抵抗改善案の検討、[2]マハカム川へのPB投入の可能性を検討した。
[1a]複数バージを押航するPB船団の性能評価:CFDにより種々のPB船団周りの流場を可視化し、直進時ならびに定常斜航・旋回時の流体力特性のメカニズムを明らかにした。 [1b]抵抗性能の改善案の検討:1艘のバージをプッシャーが押航する基本形態に着目し、CFDによりバージ船尾形状のみを計8通り変更した時の抵抗性能を評価した。バージからの後流強さ・広がりに応じて連結部およびプッシャー周りの流場が変化する様子を明らかとし、抵抗低減が図れる可能性を示した。 [1c]操縦性に及ぼす載荷および浅水影響の解明:1/22.5スケールのプッシャーとバージ模型を製作し、満載と空荷の2通りのバージ載荷状態で操縦運動試験を実施した。そしてPBの操縦流体力を調査すると共に、シミュレーション計算により操縦性能を評価した。特に空荷バージを押航する場合、初期旋回性能は劣るが,操舵角の増加に伴い,旋回性能が急激に改善される傾向にある事を示した。加えてバージの載荷状態が増すと、横流れ減衰力の着力点が船首側へシフトする事で、保針性が大幅に悪化する事を明らかとした。また曳航水槽内に仮床を敷いて浅水域での試験を実施し、操縦流体力に及ぼす浅水影響を調査した。 [2]マハカム川へのPB投入の検討:タグ・バージによる石炭の河川輸送が盛んなインドネシアのマハカム川を対象に、PBによる輸送方式を導入した場合の操船シミュレーションを実施した。流れがある河川屈曲部の操船および避航操船の基本的な検討を通じて、航行安全性の観点から、PB方式の有用性及びバージ大型化の可能性を示した。引き続き輻輳河川域での衝突危険度等を評価する。
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