研究課題/領域番号 |
26820381
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柴原 誠 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70628859)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相変化蓄熱材 / 過冷却 |
研究実績の概要 |
本年度は、排熱回収に適した相変化蓄熱材の潜熱量の実測および蓄熱過程の解明を目的に、固相から液相への溶融実験及び数値シミュレーションを実施した。実験では、計画通り相変化蓄熱材の溶融実験を実施し、相変化蓄熱材の蓄熱・放熱特性を明らかにした。相変化蓄熱材には、陸上での利用実績がある酢酸ナトリウム三水和物に加え、新たに有機系のD-マンニトールを使用した。D-マンニトールは優れた潜熱量及び耐腐食性の物質であり、融点が排ガスエコノマイザーの出口温度付近であることから舶用蓄熱材の候補として選定した。実験結果から酢酸ナトリウム三水和物は、溶融時に自然対流が発生し、温度成層が形成されることが判明した。また、放熱時には、温度が融点以下でも液相が継続する過冷却を経て凝固熱を放出する現象を捉えることができた。一方、D-マンニトールは、溶融時に温度成層が確認されず、放熱時の過冷却時間においても酢酸ナトリウム三水和物より短く、取扱いが容易であることが判明した。さらに、各相変化蓄熱材の熱重量分析を実施した結果、酢酸ナトリウム三水和物は融点(約60℃)近くで吸熱反応を示した。また、80℃以上で水分の蒸発が始まり重量が低下していることから、80℃以上の使用に関しては注意が必要であることがわかった。一方、D-マンニトールに関しては、有機系の蓄熱材であるため蓄熱時の温度が重量に及ぼす影響は少なく、高温域においても使用可能であることが判明した. 数値シミュレーションでは、相変化蓄熱材に一定の熱流束を与えた解析モデルを作成し、酢酸ナトリウム三水和物及びD-マンニトールの溶融過程について調べた。解析結果を実験結果と比較すると、固相及び液相での温度は概ね予測できたが、相変化開始時の温度が若干高くなる傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り蓄熱材の溶融・放熱実験を実施し、蓄熱材の熱特性を明らかにすることができた。また、熱重量分析により、蓄熱材の使用可能温度や過冷却現象の有無について調べることができ、船舶への適用について多角的に評価・分析することができた。一方、数値シミュレーションに関しては、溶融過程を予測することを目標としたが、数値シミュレーションの温度が実験結果より若干高くなる傾向を示したため、相変化時の予測精度の向上が課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、まず相変化時の予測精度向上を目的に物理モデルの検討及び解析コードの整備に取り組む。具体的には、相変化時の比熱を実験的に計測し、解析モデルへの適用について検討する。相変化時の比熱に関するデータは公表されておらず、実測からのモデル化が妥当と考えている。また、当初の研究計画では高温ガスによる排熱回収を予定していたが、ガスの高温維持が困難なため高温域では排熱源を高温ガスと同等な熱媒に変更し、実験を行う予定である. これらの実験結果に基づき、高度化した解析モデルを用いた伝熱流動解析を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より実験装置の製作に時間を要したため、伝熱解析関連機器及び計測関連機器の設備更新がうまくできなかった。また、海外の出張回数が減少し費用が一部縮小したため、執行に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費には執行が遅れている伝熱解析関連機器及び計測関連機器などの設備更新に使用し、旅費には海外出張費として使用する計画である。
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