研究実績の概要 |
本研究では相変化蓄熱材を用いた舶用ハイブリット蓄熱システムによる排熱回収を目的に, 舶用蓄熱材の探索及び溶融過程の解明に取り組み, 排熱回収用熱交換器に重要となる熱伝達率を実験計測及び数値シミュレーションにより明らかにした. 平成26年度は相変化蓄熱材の選定を中心に研究を進め, 陸用蓄熱材の潜熱量と融点を中心に調査を行い, 排ガス出口温度近傍で相変化する蓄熱材を選定し, 溶融実験を行った. 潜熱量を計測する実験装置を製作し, 実験データとして各種蓄熱材による温度履歴を取得し, 溶融及び凝固特性を把握した. また, TG-DTAにより相変化時の潜熱及び熱重量を評価した結果, 融点が約436K、潜熱量が約337kJ/kgのD-mannitolを排熱回収用蓄熱材として選定した. 平成27年度は平成26年度に選定した舶用蓄熱材(D-mannitol)を用いた排熱回収で重要となる自然対流熱伝達率を計測した. また, 伝熱流動解析を実施することでガス温度や流速が熱伝達に及ぼす影響を調べるために, 蓄熱材側及びガス側の熱伝達特性をそれぞれ明らかにした.ガス側の熱伝達に関してはガスループ内に設置した試験発熱体を用いて熱伝達率を実測及び数値シミュレーションを実施し, 実験相関式を取得し伝熱管外の温度分布を明らかにした. 一方, 蓄熱側は蓄熱時の溶融過程を数値シミュレーションにより可視化することで最適な蓄熱条件について検討し, 溶融時の伝熱現象を予測できる解析モデルを構築した. 解析結果から, 溶融初期の固相-液相界面における熱伝達率は液相のみに比べ高くなるが, 溶融が進行するにつれ熱伝達率が低下することが明らかになり, 蓄熱速度が低下することが明らかになった. また, 実験より熱入力を変化させた場合の伝熱管内外の自然対流熱伝達及び沸騰熱伝達を実測すると共に, 自然対流熱伝達の簡易相関式を取得した.
|