研究課題/領域番号 |
26820382
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 翼 大島商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10390501)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 誘電体バリア放電 / 塗装剥離 / 荷電粒子 / ストリーマ |
研究実績の概要 |
昨年度の実験結果を基に,塗装されたアクリルサンプルに大気圧プラズマを照射することで,剥離し易くなる傾向を具体的に検証した。実験の結果,平均剥離率に着目してみると,大気圧プラズマを照射していない時は約8%であるのに対し,照射した場合は平均で約80%以上剥離していた。また塗装を剥離させる平均剥離荷重は,印加電圧が12kVp-pから24kVp-pと高くなるにつれ,3.5kNから2.4kNと減少する傾向にあった。また印加電圧と照射距離の関係では,印加電圧が高く,プラズマ照射距離が長い方が,より小さい剥離荷重で塗装が剥離し易い傾向にあることが分かった。以上の事から,大気圧プラズマを生成する印加電圧と照射する距離が塗装の剥離に影響していることが分かる。 また,今までの実験結果等を踏まえ,大気圧プラズマ発生用高圧交流電源を設計し,IDX社(栃木県)に製作して頂いた。主な仕様としては,出力波形が正弦波・三角波・方形波の3種類で,出力電圧(10kV以上)・周波数(10kHz~20kHz)が可変できるようになっている。なお,この電源を用いた実験については,順次行っていく予定である。 次に,塗装が剥離し易くなるメカニズムの解明について,その進捗状況を報告する。塗装が剥離し易くなる傾向から,塗装表面に照射されるプラズマの集中(ストリーマ)が塗装剥離メカニズムのキーポイントになっていると推測された。また得られた実験結果を裏付けるため,大気圧プラズマを照射した後の塗装の硬度や熱応力に対する影響等を確認する実験を行っている。 最後に,試験サンプルを鋼鈑とする実験であるが,母材が鉄ということもありプラズマが集中する部分(ストリーマ)が生じる。このストリーマは,上記のメカニズム解明に関係していると考えているため,まずは塗装剥離のメカニズムを解明してから,試験サンプルを鋼鈑とした実験に取り掛かる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究成果から,電極間に印加する電圧が高く,そして大気圧プラズマを照射する距離が長い方が,その塗装が剥離し易くなるという傾向が得られた。また,得られた実験結果および,そのメカニズムを裏付けるための検証実験を行っている。なお塗装剥離のメカニズムにおいて,得られた実験結果および実験時の状況等から,大気圧プラズマを塗装した表面に照射する時,試料表面にプラズマが集中する箇所(ストリーマ)が観察されること,実験で採用している誘電体バリア放電は断続的な放電が生じていること,大気圧プラズマが持つ熱エネルギーが塗装面に作用する熱応力の影響等が推察され,これらが塗装剥離に寄与していると考え,現在,その検証実験を行っている。 平成27年度に予定されていた高電圧電源の設計・製作については,これまでの実験結果ならびに情報交換に基づき設計した仕様で,栃木県にあるIDX社に製作して頂いた。この新たに製作した電源を用いて,平成28年度中に塗装剥離の傾向(基本特性;出力波形の形状や周波数特性)を調査する予定である。 また平成27年度に引き続き,国内・国際会議での発表等に向けた準備も進めており,平成28年度中には学術論文としての投稿も予定している。なお平成27年度中に,これまでの研究成果をまとめた学術論文を投稿したが,査読の結果,その内容(構成)を再検討したため,掲載不可となった。この学術論文投稿については,平成28年度に再度投稿する予定である。 以上の事から,研究の目的の達成度は「おおむね順調に進展している。」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果で,塗装を施したサンプルの表面に大気圧プラズマを照射することで,その塗装が剥離し易くなる傾向を具体的に確認することができた。また塗装剥離のメカニズムについても,得られた実験結果を考察することで,いくつか候補を挙げることができ,その検証実験を計画・実行している。引き続き,得られた実験結果を裏付ける検証を重ねることで塗装剥離のメカニズム解明を行っていく予定である。 平成28年度(最終年度)の研究推進方策については,第一に実験結果を裏付ける検証を行うことで,塗装剥離のメカニズムを解明することが挙げられ,最優先課題として取り組んでいく予定である。また当初の予定通りに,新たに製作した高電圧電源によるプラズマ剥離評価の再実験を行っていく。但し,昨年度製作した電源の改良については,塗装剥離のメカニズムが解明できた後に取り掛かる予定である。 併せて,試験サンプルを鋼鈑とする実験であるが,「研究実績の概要」でも記述したが,まずは塗装剥離のメカニズムを解明してから,試験サンプルを鋼鈑とした実験に取り掛かる予定である。 また,これまでの研究成果を国内・国際会議等で発表することや,オープンキャンパス等の機会を利用して小中高の生徒が分かり易く理解できるような出前授業等を企画していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿していた学術論文の掲載料(見込)の使用額が次年度使用額として生じた。なお,この投稿論文は査読の結果,掲載不可となったため,再度,内容を検討し,平成28年度に再投稿する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度(平成28年度)の主な使用計画としては,学術論文の投稿費用,英論文の校正費,国際学会等での発表,情報交換・研究指導に対する旅費を予定している。
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