研究課題/領域番号 |
26820385
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
鈴木 良介 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (20711328)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 6自由度船体運動時系列計算 / 荒天中の船体運動特性 / 荒天中の操縦運動に関する干渉流体力の変化 |
研究実績の概要 |
第一に、既存のモデルを基に、船体水線面固定座標系での6自由度船体運動時系列計算プログラムの作成を実施した。平成26年度終了時点では、外乱(波漂流力、一様風)中の前後・左右・回頭方向の3自由度の操縦運動の推定を可能とした。推定結果を波浪中の自由航走模型試験結果と直接は比較していないが、過去の文献から同様の状態における操縦運動の推定結果と比べておおよそ妥当であることを確認している。また、非線形性を考慮した各時刻の瞬間における波面に対するフルードクリロフ力の計算を可能にした。現段階までに作成されたプログラム自体から得られる新たな知見は少ないが、研究の目的としている「荒天中の船体運動特性」の評価には上述の外力の考慮は不可欠であるため、今後その評価を可能とする6自由度船体運動時系列計算プログラムの基礎を作成することができたという点で意義がある。 第二に、極度の高プロペラ荷重度と大斜航中における自航要素および船体と舵・プロペラの干渉に関する係数の変化を平水中の拘束模型試験にて調査をした。模型船は低速肥大船としてタンカー(KVLCC1)を採用した。これにより、船速が0付近まで低下する荒天状況を想定した船体に働く流体力特性と船尾流場の変化の傾向を明らかにした。また、本試験結果によって明らかとなった微係数の変化を上述のプログラムで考慮可能とするように拡張をおこなった。平水中の通常操船の範囲における操縦運動推定では、これらの変数は実船の自航点付近で一定とみなされることが多く、極度の高プロペラ荷重度におけるそれらの変化は過去にあまり明らかにされていない。そのため、荒天中の船体運動の推定精度の向上には、本実験結果が非常に有用であると考える。加えて、既存の定常直進中の操縦応答推定プログラムを用いて、荒天中の操縦運動推定に対するこれら微係数の変化の影響力を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では平成26年度終了時点の目標は、拘束模型試験の実施と6自由度船体運動時系列計算プログラムの概略の作成をし、追波中で船速が増加する波乗り現象やブローチングによる転覆の計算を可能とすることとしていた。しかし、実際の進捗では、拘束模型試験は予定通り実施したが、6自由度船体運動時系列計算プログラムの概略の作成を完了しておらず、3自由度の操縦運動から転覆を含む6自由度の船体運動に拡張する段階の途中までしか完了していない。そのため、「やや遅れている。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
第一に6自由度船体運動時系列計算プログラムの概略の作成を完了し、追波中で船速が増加する波乗り現象やブローチングによる転覆の計算を可能とする。また、過去に弊所で実施した自由航走模型試験結果と比較し、本プログラムの妥当性を確認する。そのために、まず船体による波の拡散から生じる力(ディフラクション力・ラディエーション力)の計算を可能とする。荒天中の大波高では、船体動揺の推定精度を向上するにはこれらの流体力の非線形性を考慮する必要があるが、時間節約のために簡略化をして線形理論を基に計算を行っていく。その後、実船の主機作動制限を関連付けて計算を行い荒天中の船体運動特性を明らかにしていく。 研究開始当初の目標は不規則波中の運動の解析までを目標としていたが、平成26年度の進捗の遅れを考慮して、最低限の計算結果を得るためにまずは規則波中の運動を対象とする。また、主機作動制限も簡易的な定常状態のモデルを扱っていく。その後、可能な限り不規則波中の運動に発展させる。また、操舵を含むような主機作動制限等を考慮していく予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
6自由度船体運動時系列計算を行うための計算機一式と種々の計算データを保存するための大容量記憶装置の購入を平成26年度に予定していた。しかし、進捗の遅れから時系列計算はまたおこなっておらず、数値計算に必要な計算機の性能も未だ不確定な部分があったため購入を見送った。これらを次年度に購入する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
主な物品費としては第一に上述の計算機一式の購入を予定している。作成した時系列計算プログラムの計算速度にも依存するがモニターと合わせておよそ60万円前後を検討している。加えて、計算データを保存する大容量記憶装置を購入する。さらに時系列計算の6自由度の煩雑な定式化を行うにあたり、数式処理システムMathematica(約20万円)の購入を予定している。また、学会発表の欄に記載した2件の学会参加費と論文投稿費にも使用予定である。 旅費は、学会発表の欄に記載した2件の学会(国内1件, 国外1件)に加えて平成27年度の成果を国内で1件発表するための学会の費用として計50万円程度使用予定である。
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