温室効果ガスのひとつである亜酸化窒素は,他の排ガス成分より熱分解を生じやすいものの,光分解は行われにくく,燃焼過程または排気過程で生成された亜酸化窒素が大気中に放出された後は150年間に渡って温室効果を維持し続ける.しかも亜酸化窒素は二酸化炭素の310倍の温暖化係数を持っているため,排出量が少ないにもかかわらずその影響は無視できない. 舶用ディーゼル機関における燃料燃焼では,予混合燃焼及び拡散燃焼が同時に存在し,圧力及び温度等が刻々と変動する燃焼場を持っているため,亜酸化窒素の発生原因を解明することは極めて難しい.また,舶用ディーゼルエンジンにおいて,近年,触媒反応によるNOx等の削減が注目されている.しかし,低質油・低い排ガス温度による選択触媒還元(SCR: Selective Catalytic Reduction)触媒の短期触媒被毒といった舶用独自の問題があり,触媒性能劣化による亜酸化窒素の発生に関する研究が必要である. そこで,本研究では,舶用ディーゼル機関の燃料油を模擬した燃料を用いて亜酸化窒素の発生原因を明らかにすると共に,その生成メカニズムを究明した.さらに,反応リアクター及び反応動力学的な検討により,触媒の劣化度がN2Oの生成・分解反応に及ぼす影響を明らかにした.
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