研究課題/領域番号 |
26820389
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
牧田 寛子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 技術副主任 (40553219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鉄酸化細菌 / CO2固定 / 有機物生産 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、鉄を唯一のエネルギー源とし、海水中のCO2固定により生育する海洋性鉄酸化細菌が、その菌体外に産生する有機高分子の特異な構造および有用性を明らかにすることである。 平成27年度は、平成26年度までに検討していた培養手法を用いて、菌体外有機高分子の大量取得を行い、集めた試料の構造解析法の検討を行うこととした。培養によって集められた試料には、菌体外高分子の他に菌体細胞と多量の鉄酸化物が含まれている。菌体外高分子の分析にあたり問題となるのが、高分子を覆う鉄酸化物の存在である。鉄酸化物は、比色定量法での反応やHPLC分析を行う際の標識化を阻害する。したがって、できる限り鉄酸化物を除去することが必要である。そこで、まず酸や還元剤などの化学的な手法を用いた鉄の除去方法を検討した。作用させる反応溶液(酸、還元剤)の種類、濃度、反応時間、温度などを変化させ、培養によって集めた試料中の鉄の溶解を試みた。なお、反応溶液に作用させた後の菌体および有機高分子の様子は、電子顕微鏡により確認した。検討の結果、鉄除去のための最適な反応溶液組成および条件を導き出すことができた。現在、これらの手法を用いて、分析に足る量の試料を収集中である。さらに、鉄を除去した状態および鉄を除去しない状態での有機高分子の分析手法についても検討を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目的である鉄酸化菌の菌体高分子の分析方法の検討について、試料の調製方法や新しい分析手法の構築など、目的の分析手法についての知見を十分に得る事ができた。さらに鉄酸化細菌が産生した有機高分子試料を機器分析に供し、初検討を行うことができたため、達成区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までに得た培養手法や解析手法を用いて、鉄酸化細菌が産生する菌体外有機高分子の構造解析を実施する。分析にあたり重要となるのが、有機高分子の分子量や繰り返し単位である。高分子を構成する糖残基(あるいはアミノ酸残基)の種類が多いほど、構造決定を行うことが難しくなる。まずは有機高分子の大きさや性質(親水性/疎水性の程度、各pH下での挙動など)をHPLC等を使用して明らかにする。得られたサイズや性質の情報をふまえて比色定量法、GC、LC、MS分析などを駆使して組成の詳細を明らかにする。組成分析を行った後、部分的な加水分解を施したサンプルを用いて、MS/MS分析により配列を決定する。また平行して、金属吸着能などの有用性の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試料調製用の大型装置について、より研究に適した機種を選定するため、分析方法の見直しと再検討を行った。その結果新しい分析手法を構築することができたが、想定していたよりも分析手法の検討に時間がかかってしまったために大型装置購入予算の一部を次年度に繰越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度購入予定であった大型機器の購入に使用する予定である。具体的には冷却機能のついたインキュベーターや分析試料を調製するためのエバポレーターなどである。
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