研究課題/領域番号 |
26820395
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
米津 幸太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90552208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希土類元素 / 地化学標準試料 / ゾル-ゲル法 / LA-ICP-MS |
研究実績の概要 |
本研究は地化学試料中の希土類元素(REE)をLA-ICP-MSで局所分析する際に最適な、均質かつ目的に合った任意の濃度範囲に調整可能な固体標準試料の新規調製を目的としている。この新規標準試料は従来の市販のものとは異なり、分子レベルでの構造を制御した15種類のREEを均質にドープした石英標準試料であり、本年度はREEとしてGd、Dyのいずれかあるいは両方を含む石英標準試料の調製を行った。 調製した試料の均質性の評価にはLA-ICP-MSによる線分析を用いた偏差を用い、分子レベルの構造評価は各種分光学的手法を用いることで行った。 その結果、濃度範囲が125-25800ppmのGdをドープしたアルミナ-シリカ焼成ゲル中のGdでは、FT-IR分析では主だった有機物のピークは観測されなかった。また,TG-DTA分析では,重量減少率は低く,試料中の水分や揮発性成分はなく,一様に酸化物となっていることが示唆された。XAFS分析のGd-L3端XANESの結果からは、標準物質で出現するピークが,焼成ゲルには見られず,また焼成ゲルの7.28keV付近のピークは,酸化物よりも焼成ゲル試料のほうが低エネルギー側にずれていた。次にGd-L3端EXAFS振動をフーリエ変換して得られた動径構造関数の結果より、焼成ゲルの動径構造関数は第1配位圏のピーク位置が標準物質と比較してやや長くなっていた。このことは,焼成ゲル中のGd原子が比較的分散して焼成ゲル中に存在していることを示すものであると考えられる。これらの結果より,アルミナ-シリカ焼成ゲル中におけるGdの分散性が高いことが分かった。同様の結果はDyをドープした石英ガラスでも得ることができた。今後はさらに濃度範囲を低濃度側に振っていったり、より多くのREEが共存する中での調製を行ったりする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
REEをドープした石英標準試料内で、単一のREEが存在する場合と複数のREEが共存する場合での分光学的手法の結果に及ぼす影響を見積もることができ、今後15種類すべてのREEをドープした場合の解析に道筋が見えたことが大きい。また、市販の標準試料と比較してもより均質な標準試料化が現在の濃度範囲ではできており、今後は様々な濃度範囲、特に低濃度側への拡大とドープ元素種の数を増やしていくことが課題であるとしっかりと方向性が見えているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策としては、ここまで中心に据えてきたXAFSによる直接的なREEの配位構造の評価に加えて、NMRによるアルミニウムから見たREEの配位構造評価やLA-ICP-MSを用いた3次元マッピングによる均質性のより高度な評価を行っていくこととなる。そのためにもこれまでのやや高濃度側で得られたさまざまな情報を低濃度側での構造評価に生かすことが重要となる。また、単一元素で得られた結果が、2種類のREEを含む試料までは応用が可能であったが、これを4種類、15種類と拡大させていけるかが最も本研究で重要な部分であり、そこに研究の焦点を絞って、最適な地化学標準試料の調製を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては放射光施設での実験において、成果非占有のビームラインを使ったことによる使用料の低減や学内の分析センター利用をうまく組み合わせることができたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はLA-ICP-MSでのREE均質性の評価が最大のテーマであり、そのアルゴンガスへ研究費を積極的に振り向けたり、REEの元素数を増やす予定であるので、その試薬代へと充当していく計画としている。
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