研究実績の概要 |
本研究は地化学試料中の希土類元素(REE)をLA-ICP-MSにて局所定量分析する際に不可欠な均質かつ任意濃度範囲に調整可能な固体標準試料のゾルゲル法を用いた新規調製を目的としている。この新規標準試料は市販されている既存のものとは異なり、AlでREEを囲うことで分子レベルで構造を制御し、15種類のREEを均質にドープさせたガラス標準試料であり、本年度は15種類のREEを含んだガラス標準試料の調製を主として行い、調製した試料は放射光XAFSを含む各種分光学的手法とLA-ICP-MSを用いて、その構造の均一性および調製方法の問題点を明らかとした。 その結果、15種類のREEを含む試料中では、FT-IRより顕著な有機物の存在は認められず、XRDより構造は非晶質であった。また、TG-DTAより、試料中には残存する水分や揮発成分がほとんどなく、一様な酸化物であることが示唆された。XAFS分析を試料中のGd・Dy・Y・Yb(L3吸収端の重なりを考慮)に対して行ったところ、L3吸収端の動径構造関数から、調製試料の第一配位圏のピークが各種標準物質と比べてわずかに長いことがわかった。このことは調製試料中のREE原子の分散性が比較的良く、一様に調製試料中に分布していることを示唆する。この結果はK吸収端の解析結果とも調和的であった。これらの各種分析結果をこれまでの1~4種類のREEを含む調製試料の結果と比べると、REE濃度が125‐25,000ppmの濃度範囲内であれば、REE同士の調製試料中での凝集は防ぐことができると言える。 また、LA-ICP-MS分析により、調製試料のほうが従来品に比べて凝集が起こりやすい高濃度帯においても分散性が高く、一様になる傾向にあった。これらの結果より、3次元的なREEの分布が調製試料中で分子レベルで制御され、かつ従来の標準物質よりもより均一であることがわかった。
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