研究課題
本研究ではトロイダルプラズマにおいて、新古典ポロイダルイオン粘性の非線形性が閉じ込め改善モード遷移に対して担う役割を解明する。そのため、大型ヘリカル装置(核融合科学研究所)と、TJ-II装置(スペイン, CIEMAT研究所)、Heliotron J装置(京都大学)において電極バイアス実験を行う。イオン粘性は磁場リップルとともに増加するが、TJ-II装置は大型ヘリカル装置に比べて、実効ヘリカルリップルが10倍大きいため、粘性のフロー依存性や遷移に必要な駆動力に明確な違いが得られる。本研究ではさらに、東北大学ヘリアック装置、コンパクトヘリカルシステムでの電極バイアスHモード遷移との比較を行い、イオン粘性の磁場リップル構造依存性を明らかにする。平成27年度はHeliotron J, TJ-II装置において電極バイアス実験を行い、バイアス時のプラズマの振る舞いを調べた。Heliotron J装置では、従来、0.1 T程度の磁場条件で、2.45 GHz ECRH (~10 kW) で生成されたプラズマを対象に、バイアス実験を行い、閉じ込めの遷移を観測している。今年度は、イオン-中性粒子間の摩擦力が小さくなるように、1 T程度の磁場下で、数100 kW程度のECRH, NBIを用いて生成したプラズマを対象に実験を行った。この実験において、電極バイアスによって、プラズマ中のトロイダルフローを能動的に制御できることを示した。TJ-IIの実験では、電極バイアスによる閉じ込め遷移を実現することはできなかったが、定電圧の電極バイアス下での、密度ランプアップ実験において、プラズマの閉じ込め状態が電子ルートからイオンルートに遷移する際に、電極電流が明確に減少する現象が観測された。これはイオンルートに遷移した際に粒子閉じ込めが改善したことを示している。この電極電流の振る舞いは、広範な密度条件で観測された。
3: やや遅れている
平成27年度の主たる目標は、TJ-II装置において、電極バイアスによる閉じ込めの遷移を実現し、さらに、複数の磁場配位で実験を行い、遷移条件に対する磁場リップル依存性を取得することであった。しかしながら、TJ-IIサイトにおけるバイアス電源の出力が見込みよりも小さかったこと、電極-真空容器-バイアス電源間の電気回路構成が不適切であったことにより、十分なバイアス電圧の印加ができず、閉じ込めの遷移を実現することができなかった。
現状のTJ-IIのバイアス電源、バイアス回路構成のもとでは、電極バイアスによる閉じ込め遷移の実現は不可能である。そこで、これまで申請者が国内の装置を対象として行ってきた電極バイアス実験で実績のある松定プレシジョン製の電源を二台TJ-IIに持込み、実験に供する。これら二台の電源をマスタースレーブ接続することで、650 V/ 46 Aの大出力が可能となるため、電極バイアスによる閉じ込め遷移を実現できると考えられる。また、TJ-IIのバイアス回路では、プラズマ中に挿入された電極とリミター (ともに浮動電位) との間にバイアス電圧を印加しているため、回路はダブルプローブの呈をなしており、電極-リミター間の電位差を制御していることになっている。この構成を変更する。すなわち、バイアス回路からリミターを除外し、代わりに真空容器に接続することで、電極-真空容器間でのバイアスが可能となる。これにより、電極電位を直接的に制御できるようになり、電極-プラズマ間の電位差(径電場)の制御が可能となる。新規で持ち込む電源はAC入力が絶縁されているため、絶縁トランスを用いることなく、この構成が可能である。
TJ-II装置での電極バイアス実験において、電極の交換を要しなかったため。
TJ-II装置でのバイアス回路構成時の消耗品に充当させる。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Nucl. Mater
巻: 463 ページ: 1100, 1103
10.1016/j.jnucmat.2014.11.131
http://www.nifs.ac.jp/rd/phprd/publications/ech.pdf