研究課題/領域番号 |
26820400
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
柴田 欣秀 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 博士研究員 (20633209)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ディスラプション / ハロー電流 / トカマク / 電子温度分布 / 電流クエンチ / MHD不安定性 |
研究実績の概要 |
大型トカマク装置JT-60Uにおけるハロー電流計測の実験解析を進展させた。ハロー電流の大きさはハロー領域の幅、電子温度によって決まる。1998年頃から2008年までに発生したディスラプション放電を解析したところ、2003年以降ではディスラプション時に速い垂直位置不安定性が発生しておらず、ハロー電流が観測されていないことが分かった。そこで、2000年頃のハロー電流計測実験を解析し、21放電でハロー電流が評価でき、且つ2放電についてはトムソン散乱計測によりハロー領域の電子温度分布が評価できた。 ハロー電流の幅、ディスラプション発生前後の物理量評価のために、CCS-selene(日本原子力研究開発機構)を使用した。CCSをJT-60U用に改良し、ハロー電流発生時のプラズマ物理量の評価を行えるようにした。ハロー領域の幅の評価についてはseleneを用いて評価が行えるように改良を試みている。 ハロー電流発生に関連するディスラプション時のプラズマ電流の減衰速度は先攻研究で、電流クエンチ初期では電子温度分布の時間変化がプラズマインダクタンスの時間変化を発生させ、それによりプラズマ電流が減衰することが分かっている。そこで、電流クエンチ初期以外のプラズマ電流の減衰機構について、ディスラプションシミュレーションコードDINAと実験データを組み合わせて解析を実施した。解析の結果、電流クエンチ初期以外ではプラズマ抵抗(プラズマ全体の電子温度)により電流減衰が決まっており、電子温度分布は影響しないことが分かった。 さらに、ディスラプション発生前のMHD安定性解析により、電流クエンチ初期の電子温度分布はディスラプションを発生させるMHD不安定性の発生位置、大きさにより違いが生じている可能性があることが判明した。電流クエンチ時の電流減衰時間の高精度な決定モデルの構築を行うべく、引き続き調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度なハロー電流モデルの構築に必要であるJT-60Uでのディスラプション時のハロー電流値、ハロー領域のプラズマ抵抗に大きく影響を与えるハロー領域の電子温度分布を複数の放電で評価出来たため。また、ハロー電流発生に大きく影響を与えるプラズマ電流の減衰速度について解析が進展し、電流クエンチ初期以外ではプラズマ抵抗によりプラズマ電流が減衰していること、さらに、電流クエンチ初期のプラズマ電流の減衰に大きく関わる電子温度分布の時間変化はディスラプション発生前のMHD安定性解析により、ディスラプションを引き起こしているMHD不安定性の発生位置、大きさに影響を受けていることが判明したため。ハロー領域の幅の評価については、現状では評価できていないため、引き続き作業を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度解析を行ったJT-60Uのハロー電流実験の結果を使用して、ディスラプションシミュレーションコードDINAのハロー領域の幅や電子温度モデルの検証を実施する。ハロー領域の幅の評価については、今年度から引き続きseleneを用いた評価を試みる。 さらに、ディスラプション時のプラズマ電流の減衰機構を解明し、実験データに基づいたプラズマ電流の減衰モデルの作成を実施する。特に、電流クエンチ初期においては、電子温度分布の時間変化が重要であるため、ディスラプションを引き起こすMHD不安定性の安定性計算と連携させたモデルの作成を目指す。このように、実験データに基づいたモデルを作成することにより、より予測精度の高い予測モデルの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験データ解析用計算機が予定より安く購入できたこと、海外で開催される国際会議に出席する予定であったが、国内で開催された国際会議に出席したため、その分の旅費の差額が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では主にシュミレーションを行う事を予定しているため、シミュレーションができる環境作り(高性能計算機、シミュレーション、解析用ソフトウェアの購入など)に予算を使用する。また、ハロー電流モデルの構築のために、プラズマ関係書籍の購入も実施する予定である。
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