本研究はトカマク型核融合装置において様々な実験装置で使用されているディスラプションシミュレーションコードDINAコードに組み込まれたハロー電流予測モデルの検証、最適化を実施した。予測精度の高いハロー電流予測のためにはディスラプション時のプラズマ電流減衰、垂直位置移動現象、およびハロー領域発生の物理を理解し、モデル化する必要がある。プラズマ電流減衰については、大型トカマク装置JT-60Uの実験データを用いて、電流減衰に大きく影響を与えるプラズマインダクタンスの時間変化がディスラプション中の電子温度分布の時間変化に大きく影響を受け、その電子温度分布はディスラプションを引き起こすMHD不安定性により決まる可能性があることを示した。実際に電子温度分布の時間変化をDINAコードに組み込み、精度よく電流減衰を予測できた。垂直位置移動現象では、JT-60U、および核融合実証炉DEMOにおいてDINAコードを用いた解析を実施した。JT-60Uでは実験データと良い一致を示し、モデルの妥当性を確認した。また、DEMOの計算では、ハロー電流発生に大きく寄与する垂直位置移動現象の予測にはダイバータ部の構造物が大きく影響し、精度の高い評価には正確な構造物モデルを組み込む必要があることがわかった。ハロー領域発生予測モデルについては、実験装置との比較が必要なため、JT_60Uの実験データの解析を実施したところ、かなり昔に実施された実験であったため、実験データが不十分であることが判明した。そこで、大型トカマク装置DIII-Dでの評価法を調査し、JT-60Uにその評価法の適応を実施した。研究期間内では評価法の適応のみとなってしまったため、今後は実験データを評価し、様々な条件下における実験データとDINAコードとのハロー領域発生の比較を実施し、DINAコードの予測精度の検証を実施する予定である。
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