研究課題/領域番号 |
26820401
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
仲田 資季 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40709440)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ乱流 / ジャイロ運動論 / 多粒子種乱流輸送シミュレ ーション / 不純物輸送 / 同位体効果 |
研究実績の概要 |
核燃焼プラズマにおけるヘリウム灰やベリリウム、タングステン等の不純物輸送過程の解明と制御法の確立は、核融合炉における自己点火や定常燃焼の達成する上で重要な課題である。本研究は核融合プラズマの第一原理モデルである5次元ジャイロ運動論に基づいた多粒子種乱流シミュレーションにより、炉心プラズマ乱流中の燃料・不純物輸送過程の解析を行う。 平成27年度においては、前年度に開発した多粒子種乱流シミュレーションモデルの高度化を実施した。特に異種粒子間の衝突モデルにおいて、電子-イオン衝突の計算時に発生する顕著な数値誤差を抑制する補正衝突モデルを考案し、衝突モデルが満たすべき保存特性やエントロピー増大則を高い精度で保持することが確認された。これらは燃焼プラズマ乱流解析に必要不可欠なシミュレーションモデルの拡張と位置付けられる。 拡張されたシミュレーションモデルを用いて、ITERトカマクにおける燃焼プラズマ乱流シミュレーション解析を実施した。重水素および三重水素の燃料イオンに加え、燃焼反応から生じるヘリウム灰、さらには実質量の運動論的電子の合計4粒子種から構成されるプラズマに対して、ジャイロ運動論的ITG-TEM乱流シミュレーションを実行しそれぞれの粒子種の乱流輸送特性を解析した。その結果、粒子輸送のバランスが燃料比率やヘリウム灰の蓄積率に強く依存することを明らかにした。さらに、分布パラメータに関するスキャンを実施することにより、定常燃焼条件が成立する熱・粒子輸送および分布特性を同定することに成功した。軸対称トカマクプラズマに加え、非軸対称ヘリカルプラズマにおける微視的不安定性への水素同位体効果の影響も解析された。その結果、電子-イオン衝突を介したTEM不安定性成長率の顕著な同位体効果が明らかとなり、より重い水素同位体プラズマにおいて乱流輸送低減が期待されるといった重要な指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度研究実施計画における達成目標は、1)多粒子種乱流シミュレーションモデルの高度化、2)燃料イオン及びヘリウム灰を含んだイオンスケール乱流輸送シミュレーションの実施であった。1)については、 多粒子種衝突モデルの数値的特性の改良および検証が完了しており、燃焼プラズマ乱流解析に必要不可欠なシミュレーションモ デルの構築が完了している。また、2)についても、重水素、三重水素、ヘリウム灰、電子の4粒子種からなるITG-TEM乱流シミュレーションをITERプラズマに対して実施することにより、これまでの単一粒子種解析では見出されなかった粒子輸送特性の発見や、定常燃焼条件が成立する輸送・分布特性の定量的な検証につながっている。さらにトカマクのみならずヘリカルプラズマにおける水素同位体効果についても解析が進んでいることからも、本研究課題は当初計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き、ITER燃焼プラズマ乱流輸送シミュレーションを実施するとともに、さらなるシミュレーションモデルの拡張にも取り組む。具体的には、プラズマ回転の効果および径方向電場の効果を多粒子種乱流シミュレーションモデルに組み入れる拡張を行う。これらにより、プラズマの閉じ込め性能をより高性能化する際に重要な役割を果たすと考えられているプラズマ回転や局所加熱が、乱流輸送に対してどのような物理機構で影響を及ぼすしているかを解析することが可能となる。拡張したモデルについてはLHDやJT-60Uなどに代表されるヘリカルおよびトカマク実験装置における実験データとの比較によってその妥当性や有効性の検証を行いながら本研究課題を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度においては、大規模乱流シミュレーションデータに関するバックアップ用の外部記憶メディアを購入予定であったが、シミュレーションモデル開発とその有効性検証および中規模の乱流シミュレーション解析に注力したため、大型並列計算機に付随した記憶ディスクを有効活用することができた。これにより、平成27年度内の購入予定分と次年度分とを合わせた効率的な予算執行を図ることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、開発した多粒子種乱流シミュレーションモデルを用いた総合的な大規模シミュレーション解析を予定している。最終年度であるため、これまでの成果を学術論文や学会発表にて報告する際に、シミュレーションデータおよび解析データのバックアップが不可欠となる。そのため当初予定していた研究データバックアップ用の外部記憶メディアを合算して効率的な予算執行を行う。
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備考 |
上記のプレスリリースに関しては、朝日新聞や日経産業新聞等の記事として取り上げられ、広く成果報告がなされた。
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