高性能化水素同位体吸蔵合金の創製技術に関する研究として、新たな手法であるプラズマ焼結法を用いてベリリウム金属化合物であるBe2Ti合成試験を実施した。種々の合成条件の最適化研究を試行した結果、最初に混合粉末を焼成処理することによって混合粉末を合金化し、その合金化粉末を原料としてプラズマ焼結することによって、目標であるBe2Ti単相試料の試作に成功した。更に、Be2Ti合成条件の最適化研究結果をフィードバックし、Be2V、Be2Zr単相試料の合成にも成功した。また、Be2Ti単相試料における触媒効果を調べるため、各金属元素における水素の固溶エネルギーの計算結果ではSc>Ti>V>Ni順に水素を固溶しやすくなることを明らかにし、Be2Ti単相試料のTiの一部をNi、V、Ti、Scで置換することによる水素吸蔵能力に与える触媒の効果について調査した。Be2Ti合成法の検討と並行し、ベリライド中における水素の原子レベルの挙動に関して,第一原理計算によるシミュレーション計算を行い、水素吸蔵量は全質量の約5.4%の水素が吸蔵可能であることを明らかにした。Be2Ti試料の特性評価としては、安全性評価の一環として高温水蒸気下雰囲気での水素生成量を調べた結果、1273Kで1%H2Oと反応した場合、5.27×10-3 L/cm2の水素が生成されることを明らかにした。また、各温度における水素圧力変化に伴う試料の組成変化を調べるPCT(圧力-組成-温度)特性評価を行った結果、測定前の初期活性化処理が不十分であったか、酸化しやすいBe材料の持つ特性上、水素解離平衡圧が高い可能性があることから水素圧力13MPaでも約0.5%という結果が得られた。今後水素吸蔵量が最も大きかったBe-Zr系吸蔵合金の合成条件の最適化研究や触媒効果や理論計算等の研究を進める予定である。この研究成果は国際会議にて発表2件、国内学会にて発表2件、その内、優秀ポスター賞1件の成果を得た。
|