研究実績の概要 |
平成28年度は、セシウムやストロンチウムを取り込むために昨年度まで開発したMOF( [Ln(ox)2(H2O)](Ln = Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb))を利用した金属取り込み挙動の解析を主に行った。 特に[Tb(ox)2(H2O)]を用いて、ストロンチウムイオン取り込みの物性を詳細に検討した。ストロンチウムについては、当初から確実に予定していた元素ではなかったが、放射性元素としてはセシウムに並ぶ重要元素であり、前年度の研究結果から高い選択性が示されたため、吸着物性を調べる試験を重点的に行った。 この結果、(NH4)[Ln(ox)2(H2O)]において、ストロンチウムを吸着する過程は、ラングミュアの等温吸着式によく一致し、単純なイオン交換による吸着反応とよく一致する。この吸着は約35 %程度のNH4がSrと交換した状態で飽和することが明らかとなった。また、このの時の分配係数Kdの計算から、ストロンチウムを純水中から取り込む吸着材の中でも高い吸着能力があることが示された。さらに、このMOFが他の金属の中から高い選択性でSrを取り込めるかを試験するため、人工海水からのSr取り込みを試験した。その結果、Kdはこれまで報告されているどんな材料より高い値となり、非常に高いSr選択性を持った材料の開発に成功した。 また、(NH4)[Ln(ox)2(H2O)] (Ln = Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb)において、様々な元素との反応性を試験したところ、ゲストイオンの金属イオンの大きさと取り込み挙動に関係があることが示唆され、今年度はこれらの結果を特許としてまとめた。
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