研究課題/領域番号 |
26820412
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
前山 拓哉 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (70612125)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノコンポジットゲル / LET効果 / 放射線化学 / ゲル線量計 / 三次元線量分布 / 重粒子線治療 / MRI / 水溶液線量計 |
研究実績の概要 |
ゲル線量計は水を主成分とした生体に近い材料であり、三次元線量分布を評価することができるため、放射線治療における複雑な三次元線量分布の検証手法として期待されている。一方で、これまでのゲル線量計を粒子線に用いた場合、LET (Linear Energy Transfer) が増加すると共に検出感度の低下が生じ、測定値からの直接の線量評価が困難であった。そのため、我々はこれまでの液体化学線量計の知見とナノサイズの粘土が持つ吸着特性による拡散の抑制手法による新規のゲル線量計の開発を進めた。これまでにLETに依存しない感度特性を示すことを持つ興味深い特長を持つ脱気ナノコンポジットフリッケゲル線量計(NC-FG)を報告した。本年度はNC-FGの調整条件を網羅的に変化させた時の特性評価を進め、これまでに明らかになっている水溶液やゲル状態のフリッケ線量計の反応メカニズムからは説明困難な現象が明らかになってきた。
具体的にはNC-FGの(a)クレイ濃度依存性、(b) HClO4依存性、(c)鉄濃度依存性を評価し、 (a)クレイが鉄の酸化反応に必要不可欠であること。(b)中性でも酸化反応が進み、HClO4が150 mMでは反応しない。(c)鉄の濃度増加に伴い感度が増加する結果を得ることができた。これらの結果はナノクレイを添加しないフリッケゲル線量計の性質と大きくことなっている。これまで、拡散の抑制のために用いていたナノクレイは、鉄のイオンの吸着のみならず、その反応性を変えていることを示唆している。今後はより詳細な反応メカニズムの追究をすすめ、LET依存性の制御法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画通り、より詳細な特性評価を進めることができ、放射線誘起の反応メカニズムに関する情報が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
中性条件でも変わらない感度特性を持つことから、直近ではゼラチンを必要とせず、クレイのみのゲルを作製し、その条件では感度が増加することが明らかになってきている。引き続き、組成条件を網羅的に変えた時の特性評価を進め、LET効果の抑制メカニズムの追究ならびに制御方法の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室の移動があり、実験スペースの確保の観点からより高精度なサンプル調製に必要な備品の購入が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
計画書にあるようにより網羅的な特性評価からより詳細な条件での実験に移行する。その過程で必要となる調整システム(ゲル輸送方法、水質(溶存ガス)管理、撹拌方法の均質化)を適宜改良していく。
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