研究課題/領域番号 |
26820414
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
大野 浩 北見工業大学, 工学部, 助教 (80634625)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ガスハイドレート / 生成促進効果 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
ある種の界面界面活性剤をシステムに添加すると、エネルギー機能材料であるガスハイドレートの生成速度が劇的に増大することが知られていているが、ハイドレート生成促進現象発現メカニズムの詳細は明らかになっていない。 本研究では、界面活性剤が結晶の多孔質化を引き起こすことで物質の移動度が高まり、ハイドレートの生成が促進されるというアイデア(ポーラス結晶仮説)を検証した。具体的には、低温電子顕微鏡を用いて、結晶成長促進効果の発現レベルに応じて、物質輸送を促すようなポーラス構造が形成されるかどうか調べた。 天然ガスハイドレートの生成速度を測定したとろ、Sodium dodecyl sulfate (SDS)界面活性剤を添加した系で顕著な生成促進効果が確認された。それとは逆に、Dodecyl trimethyl ammonium chloride (DTACL)界面活性剤はハイドレート抑制物質として作用することが明らかになった。 無添加システムで(Control)合成したハイドレートのテクスチャーは、概して密であり、これまでの研究で報告されているようなサブミクロンスケールのまだらパターンが散見された。SDSシステムのハイドレート形態はControlのそれと大きく異なり、ミクロンサイズの空隙を多数含む複雑な構造を持つことが確認された。クモの巣状の微細構造も時折観察される。DTACLサンプルはSDS系ほどではないが、Controlと比べて疎な構造を持っていることが明らかになった。その表面形態はラフで、ミクロンオーダのボイドも頻繁に観察された。 ハイドレート生成促進物質であるSDSのみならず、抑制効果を引き起こすDTACLにおいても、Controlと比べて空隙率の高い結晶形態が観察されたことから、”ポーラス結晶”の生成はハイドレート生成促進現象の十分条件ではないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温電子顕微鏡を用いたポーラスハイドレート仮説の検証実験は予定通り進んでいる。 その一方で、界面活性剤によるハイドレート核生成促進作用の検証実験は大幅な予定の変更を余儀なくされている。当初ハイドレート合成の原料水をシリカゲルに分散させることで、ハイドレート核生成頻度の統計解析に必要なデータを取得することを目論んでいたが、シリカゲル分散系ではハイドレート生成促進現象が発現しないことが明らかになった。そこで、シリカゲル分散法に代わる高効率測定法を現在試行錯誤している。
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今後の研究の推進方策 |
ポーラスハイドレート仮説の検証実験については、同様の実験を他の界面活性剤に対しても行い、検証結果をより強固なものにする。 界面活性剤によるハイドレート核生成促進作用の検証実験においては、シリカゲル分散法に代わって、ハイドレート合成の原料水をシリコンオイル内に乳化させたもの(w/oエマルション)を高圧熱量計内で天然ガスと反応させ、ハイドレートの生成熱を分析する方法を試す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究成果が充分に上がっており当初の予定より執行額が減額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額については次年度実施する研究に使用する消耗品を購入予定である。
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