本研究は熱エネルギーと音響パワーの相互変換現象である熱音響現象に着目した騒音エネルギーで冷熱を得るシステムの開発と確立を目指した。これは、未利用エネルギーの有効利用技術の開発に資するものであり、エネルギー関連分野の新しい技術を実現するものである。作動する機械から発生する騒音を未利用エネルギー源として着目し、熱音響ヒートポンプ効果で冷熱を得るシステムを提案した。ここで、騒音利用にはその周波数成分の複雑さとエネルギー密度の低さが課題となる。 本取り組みでは、騒音利用における課題のブレイクスルー技術として熱音響現象による音響エネルギーの増幅効果に着目し、騒音を導いた円筒管内に急峻な温度勾配のあるスタックを設置することで騒音に含まれる特定周波数音の音圧と音響エネルギーの両方の増幅効果を示した。同時にスタックが有する微細流路は音波の損失効果も併せ持つことから、増幅させた周波数音以外の周波数音波は抑制され、音波の単純化と増幅効果を同時に得られることが示された。 次に、騒音のエネルギー変換現象を可視化するための計測系の確立に取り組んだ。円管内に入力された騒音は時空間的に変動する流れと温度の両方を把握する必要がある。そこで完全非侵襲で拘束応答の流れ計測系としてLaser Doppler Velocimetryに着目し、多点計測を可能にした独自の流速計測系を構築した。また、同様に温度場の把握にはレーザー干渉計による多点時間変動場の計測に取り組んだ。 最後に、騒音由来の低い音響エネルギーから冷熱を得るための高効率な熱音響冷凍機として、枝管付きダブループ管形状型の熱音響冷凍機を提案した。従来型(シングルループ型)との比較でダブルループ管形状の優位性を示した。具体的には、冷却部を2か所有するダブルループ管型で得られる冷却温度差の総和はシングルループ型で得られる冷却温度差を超えることが示された。
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