研究課題/領域番号 |
26830001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江川 遼 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20722226)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シナプス除去 / 発達期再編 / シナプス接着分子 / N-カドヘリン / Neurexin / ニワトリ胚 / 杯状シナプス / シナプス前終末 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、エレクトロポレーションにより標的組織のごく一部を蛍光標識するまばら発現システムを導入し、それによって神経節内の個々の軸索走行を可視化し、形態的特徴を定量解析する手法を確立した。これにより、毛様体神経節中では発達に伴って軸索の枝分かれが刈り込まれていくと共にシナプスが成熟してゆき、最終的にプレとポストのニューロンが1対1関係の接続へと収束していくことが明らかとなった。神経回路同士は高密度に絡み合っていることに加えて個々の形態が非常に複雑かつ広大なためアプローチが技術的に難しいが、本実験モデルを用いれば軸索とシナプス前終末の形態発達を定量的に解析が可能であり、それによって研究目的に掲げた発達期シナプス除去を回路レベルのマクロな視点からも評価することが可能となった。本成果は国際学会において1件、国内学会・研究会において4件、口頭・ポスターにて発表を行った。 また上記の成果と併せて、標的組織のまばらな蛍光標識と目的遺伝子の導入を同時に実現するシステムを構築した。従来、軸索走行の可視化にはトレーサーが用いられてきたが、本システムを用いれば可視化のみならず同時に機能介入することができ、それによって軸索発達に関わる分子メカニズムにアプローチすることが容易に可能となった。本成果は、研究計画に掲げたシナプス前終末間の不均一な分子発現を実現する上での必須技術である。本成果はまた、2015年7月の第38回日本神経科学大会にて口頭発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、本来平成27年度に行う予定だった研究計画を前倒しして目的遺伝子をまばらに発現するシステムを構築した。また、このまばら発現システムを応用することで軸索発達の全容を定量解析できる実験モデルを確立した。本研究はシナプス除去というシナプスレベルでの発達現象に着目したものであったが、上述の成果によりシナプス除去を回路レベルのよりマクロな視点からも評価することが可能となり、これによって回路発達における様々な未解決課題にアプローチすることができると期待できる。この点において、当初の計画以上の進展を遂げていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、上述の実験モデルを用いてシナプス接着分子N-カドヘリンとNeurexinの発現量操作を行い、当初の計画通りシナプス接続の変化を発達段階に沿って定量解析するとともに、新たに軸索投射の形態発達の定量解析も併せて行う。それによって、発達期シナプス除去と発達期軸索再編におけるシナプス前終末側のシナプス接着分子の役割を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
その他の項目に計上していた共通機器室使用料は、共通機器室の決算システムの構築が遅延したことにより次年度の支払いとなった。旅費についてはエフォート分配の都合により他の研究費より賄った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった研究費は、共通機器室使用料と、核酸合成に掛かる消耗品購入と外部発注に充てる。
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