研究課題/領域番号 |
26830008
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
塚野 浩明 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90624338)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二光子イメージング / フラビン蛋白蛍光イメージング / 可塑性 / 脳機能イメージング / マウス / 大脳聴覚野 / 和音 / 記憶 |
研究実績の概要 |
我々の研究の目的は、大脳皮質一次聴覚野(AI)が、過去に聞いた声のパターンを経験として保持し、外界からの刺激をトリガーとして保持している神経活動パターンを再現する「記憶-連想回路」として働いていることを示すことである。しかしそれ以前に、マウスにおいてAI自体がどこにあるのか、その明確な場所の定義が実はよく定まっていない問題が浮き彫りになって来た。我々は、これまでAIと理解されてきた領域は、AIと他の亜領域が混同されているものであることを突き止め、AIとDorsomedial field (DM)という2つの領域に分離することに成功した(Tsukano et al., J. Neurophysiol., 2015)。これにより、ようやく本当の「AI」において、正しく生理学的機能を研究する基盤を整えることに成功したと言える。
自然界で発する音は倍音関係が基本である。従って、経験により形成される記憶-連想回路は、倍音列に乗った音にチューンされたニューロンが結合していると想定される。即ち、5+10+15+20+25・・・ kHzなどの組合せ単位の神経回路が存在していると考えられる。従って、一部の手掛かりである20+25 kHzの音が入力されると、回路が駆動し、5 kHzや10 kHzニューロンも連想され活動すると考えられる。実際のフラビン蛋白蛍光イメージング計測では、AIでそのような連想活動が観察された。さらに、この欠けた音を補う様な連想神経活動が、DM領域で起こるか否か検証したところ、DM領域では起こりにくいことが判った。即ち、「記憶-連想回路」はAI特異的な機能である可能性が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の前提となる「一次聴覚野(AI)」が、異なる2つの領域が混同されたものであることを突き止め、本来のAIの正しい場所を同定することが出来た。AIがもっとも基本的な聴覚領域で、もっとも多く研究されていることを考えると、この成果は今後の聴覚野研究を大きく発展させるものと考える。さらに、連想活動が起こる聴覚領域に特異性があることも発見し、もう一方のDM領域では連想活動が観察されないことも判った。
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今後の研究の推進方策 |
聴覚記憶-連想回路が我々の定義した「AI」に特異的である可能性を示せたことは大きな進歩である。従って、今後AIを二光子イメージングで重点的に解析していく。二光子イメージングを用いると、層別の解析が可能である。記憶-連想回路がAIの2/3層に存在することは二光子イメージングで確認している。一方、4層は入力層であるため、連想-記憶回路は存在しない可能性が高い。さらに、出力層である5層でも保存されている可能性もある。これらのことを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、想定していたよりもカルシウム指示薬の使用量が少なかった。これは、研究遂行上無駄が生じず、効率的に研究出来た結果によると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験に必要な、カルシウム指示薬や蛍光神経トレーサーなどに振り分けて使用する予定である。
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