研究実績の概要 |
成体脳の脳室下帯では、傷害を通じて新生ニューロンが産生され、嗅覚の情報を処理する嗅球へと移動して停止する。我々はこれまでに、新生ニューロンが嗅球内で停止位置を決定するメカニズムを明らかにしてきた(J Neurosci 2011; Nat Commun 2014)。新生ニューロンが移動を停止する際には、ダイナミックな形態変化が生じ、成熟していくと考えられるが、その制御メカニズムは不明である。また、この過程における嗅覚入力の役割も分かっていない。そこで本課題では、Sema3E-PlexinD1シグナルに着目し、新生ニューロンの形態制御及び嗅覚入力が与える影響を調べることを目的とした。 本年度はまず、我々が過去に報告した、香辛料を用いた嗅覚刺激法(PLoS One 2012)や外鼻孔閉塞プラグを用いた嗅覚遮断法(J Neurosci 2011)を用いて、Sema3E, PlexinD1の発現量に与える影響を調べた。次に、嗅覚入力変化が新生ニューロン配置に与える影響を解析するために、脳室下帯の新生ニューロンをレンチウイルスで蛍光標識し、マウスに嗅覚刺激及び嗅覚遮断をおこなった後、感染ニューロンの嗅球における最終停止位置を評価した。さらに、この過程におけるSema3E-PlexinD1シグナルの役割を明らかにするために、PlexinD1のRNAiを発現するレンチウイルスを用いて、同様の解析を行った。以上の結果から、Sema3E-PlexinD1シグナルが嗅覚入力依存的な嗅球内の新生ニューロン配置決定に関与することが示唆された。
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