研究課題
学習に伴って、どのように機能的神経回路が形成されていくのかについては、あまり理解されていない。本研究では、学習過程で、同期的に活動する一つ一つの細胞ペア、およびそれらから成る神経細胞集団はどのように変化していくのかを明らかにする。さらに、ここで観察された変化は、脳領域によって異なるのか、課題の難易度、学習成績に応じて異なるかどうかについても検討する。まず、行動実験系の確立を行った。頭部を固定したラット個体動物に、特定の視覚刺激Aを提示したときには、レバーを押し、特定の視覚刺激Bを提示したときにはレバーを引くということを学習させた。二種類の視覚弁別刺激に対応して、二種類の運動出力を行わせた。あらかじめ、押すと引くの二種類の運動があることを学習させておくと、弁別開始から10日間近くで、視覚弁別誘発性の運動課題の学習が達成された。この学習達成後、視覚弁別刺激の難易度を上げると、それに応じて正答率が30%程度のふれ幅をとることが確認された。2時間で平均450試行程度、課題遂行した。また、このとき、視覚刺激提示から運動開始までの時間(反応時間)についての検討を行うと、弁別の難易度に応じて、有意に反応時間の増大が観察された。さらに、この課題遂行時に、シリコンプローブを用いて、一次視覚野、高次運動野から、多細胞の神経活動をマルチユニット記録した。まだ、課題の学習達成後しか、神経活動記録を行っていないが、電極の抜き差しをして、1週間以上にもわたる記録にも成功しており、今後、学習過程での連続した記録も可能であることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
二種類の視覚弁別刺激と二種類の運動を組み合わせた、比較的高難度の行動実験系の確立を行うことに成功した。さらには、課題の難易度に応じた、行動レベルの変化も観察することができた。また、一次視覚野と高次運動野から多細胞の神経活動を行うこともできた。
現在、すでに記録した、課題遂行中の神経活動のデータ解析を行っているところである。今後、さらに解析を進めて、特に、二細胞間の同期的な活動やこれらの集合体に注目して、課題の難易度に応じた局所神経回路の変化を明らかにする予定である。また、学習過程での神経活動記録のデータも集めて、解析も行っていく。これによって、学習による局所神経回路の変化を調べ、課題の成績等を参考にして、どのような変化が大事なのかについての予測を立てる。この予測に応じて、特定の神経細胞集団にチャネルロドプシン2を発現させるなどして、人為的に神経活動を操作し、予測の検証を行う。
実験系立ち上げに伴う機器の購入をする必要があったため、当初計画よりも多くの研究経費が必要であると考え、前倒し支払請求を行った。しかし、その申請を行った後、節約に努めた結果、残金を生じることができたため。
平成26年度は、新たな行動実験系の立ち上げを行った。平成27年度はこの実験系を利用して、どんどん実験・解析を行っていく。これに伴い、特に実験消耗品の購入が増えると考えている。
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