大脳新皮質は、哺乳類のみに存在する大脳の表面を覆う領域で、多くの認知機能に関わる。6層構造からなる大脳新皮質は、各層の神経細胞が異なる入出力を持ち、記憶や学習が関与する認知課題を行う際には、様々な領域とネットワークを形成し、情報処理を行っている。運動技能は、繰り返し練習して身につけた動作で、運動学習が重要な役割を果たす。学習は段階的に進行し、初期は動きが未熟でぎこちないが、練習により行動の正確さや速度が増し、後期に運動は自動化される。これまでの研究では、運動学習課題として、飲水制限したマウスに700ミリ秒以上レバーを引くと報酬(水)が出る課題を毎日1時間、14日間連続で行わせた。その際に、アデノ随伴ウイルスが順行性だけでなく逆行性にも感染する様式を利用した遺伝子導入法を用いて、運動野第5層の神経細胞の中で、反対側の線条体に投射している皮質-線条体投射神経細胞、もしくは脊髄に投射している皮質-脊髄投射神経細胞のみに蛍光カルシウムセンサーを発現させた動物を用いて、運動学習課題実行時のin vivo 2光子カルシウムイメージングを行った。本年度は、取得したイメージングデータを解析し、学習に伴い、皮質-線条体投射神経細胞では、学習初期に運動情報量が低い細胞が、学習初期に高い細胞を追い越して高くなるのに対し、皮質-脊髄投射神経細胞では、学習初期に運動情報量が高い細胞が、さらに高くなる傾向を明らかにした。
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