研究課題
本年度、2光子カルシウムイメージング法を用いて、マウスの大脳運動野2/3層の神経細胞を同時に35個程度、隣接する神経細胞も含めて密に記録し、そのうちの一つの神経細胞をターゲットとして指定し、その神経細胞活動が上昇した次の瞬間にマウスに報酬を与える系を構築した。これを2光子イメージングによる単一細胞オペラント条件付け(single neuron operant conditioning by two-photon calcium imaging, 2pSNOC)、と命名した。2pSNOCの結果、ターゲット細胞がすでに獲得したスキル(レバー引き運動)に関連しない場合、15分間のトレーニングでその活動を上昇させることが明らかになった。この細胞活動の上昇は周辺の細胞活動の上昇をわずかに含むものの、それは微小回路上の距離には関係しなかった。周辺細胞活動の上昇はターゲット細胞との機能的相関が高い細胞と、報酬の直前に活動を示した細胞に見られた。逆に、報酬の直後に活動をよく示した細胞は条件付け期間中に活動の減少が認められた。また、自発的な神経活動の上昇を人工的な光刺激法で置き換えることにより、この双方向の活動変化を再現することができた。これらをまとめると、大脳運動野の2/3層の神経細胞群は、報酬を得るのに必要な細胞活動を強化し、そうでない細胞活動を抑制する機構を備え、それが時々刻々と変わる自発活動の変化の方向性を決めていると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
2光子カルシウムイメージングによる単一細胞オペラント条件付け法を最適化し、これに加え、光刺激を同時に行う系を構築した。これらのデータを解析し、学会発表を行い、さらに、論文にまとめて発表した。シナプス可塑性の可視化のため、スパインの形態および活動の2光子イメージング方法を構築した。単一細胞オペラント条件付け期間中の細胞活動変化を説明するための、現象論的な神経回路モデルを構築した。また、これらを大脳基底核回路との関連によって説明するための強化学習モデルの構築を開始した。これらにより、26年度計画に関しては条件付け期間中のスパイン可塑性の可視化を除いた実験のほとんどが順調に進み、27年度計画中のモデル化に関しても一部進展したので、おおむね順調と考えられた。
スパインの形態および活動の可視化のさらなる最適化と、経路特異的な光遺伝学的抑制の最適化を行う。これらの同時適用を行うことで、仮説の検証が可能であると考えられる。これらの実験に加え、大脳基底核回路との関連を意識したQ学習モデルの構築を行い、単一細胞オペラント条件付けの神経回路レベルの理論を構築する。特に、モデル化に際しては、必要になった際に基底核への摂動実験を加える可能性がある。
年度をまたいだ実験計画となったため。
イメージング時の試薬に用いるため。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Nature Communications
巻: 5 ページ: 1-12
10.1038/ncomms6551