研究課題/領域番号 |
26830023
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小澤 貴明 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90625352)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 恐怖記憶 / 扁桃体 / 中脳水道周囲灰白質 |
研究実績の概要 |
恐怖学習が十分に進行すると,その学習強度は一定となり,以降の恐怖体験はさらなる恐怖学習を引き起こさなくなる。申請者はこの「恐怖学習の漸近化」現象を嫌悪的体験の強さに応じた適応的恐怖学習のモデルとしてその神経メカニズムおよびメカニズムの破綻がもたらす個体に対する影響を研究している。 平成26年度では,神経可塑性の生じる記憶貯蔵領域である扁桃体外側核(LA)において生じる,学習依存的な嫌悪刺激(US)に対する神経応答の低下が,扁桃体中心核(CeA)-中脳水道周囲灰白質(PAG)経路の活性化によって引き起こされていることが明らかになった。具体的には,恐怖学習が漸近値に到達するまでラットを訓練した後,嫌悪刺激の到来を予測する音刺激(CS)の提示中に限局した光遺伝学によるCeA-PAG経路の不活性化を行い,嫌悪刺激到来が予測可能な条件(CS+US),嫌悪刺激到来が予測できない条件(US単独提示)のそれぞれにおける嫌悪刺激に対するLAの応答におよぼす影響を検討しところ,CeA-PAG経路の不活性化によって,CS+US条件におけるUSに対するLAの神経応答の減少,すなわち学習依存的な嫌悪刺激に対する神経応答の低下,が消失するという脱抑制が生じた。 さらに, CeA-PAG経路が機能的に恐怖学習の漸近化を引き起こしていることも明らかになった。具体的には,学習が漸近化した後の過剰訓練時に,CSの提示中に限定されたCeA-PAG経路の不活性化を行ったところ,翌日のテストにおいてラットはCSに対し本来の漸近値を超えた恐怖反応を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年度目標をして掲げた項目を全て達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,PAGにおける嫌悪刺激に対する神経応答の変化とその機能,さらにLAとの連携について検討する。当初は光遺伝学を用いて神経活動の操作とその行動への影響を調べる予定であった。しかしながらPAGの下位領域ごとの機能的な差異を考慮し,PAGにおける嫌悪刺激に対する神経応答の変化を詳細に記録する実験を優先して行うよう,当初の計画を修正する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞記録用の電極作製,また実験動物に対する施術を効率的に行うことができたため,支出をおさえることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
計画した実験をより効率的に行うために,分子定量,生体内レーザー照射および細胞外記録関連装置を購入予定である。
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