マウスの第一次体性感覚野に存在するバレル皮質の第4層神経細胞は、生後直後は四方八方に樹状突起を伸ばしているが、生後1週目にかけてヒゲからの刺激に応じて樹状突起の形態を変化させ、最終的にバレルの内側(hollow)に向かってのみ樹状突起を伸ばす。我々のこれまでの研究でバレル皮質に特異的に発現するBtbd3が外部刺激依存的な樹状突起の形態制御に必要であることを明らかにした。しかしBtbd3がどのように樹状突起の除去または維持を決定するのか、そのメカニズムは不明なままである。 本研究の目的は、Btbd3を介した樹状突起の形態制御に関わる分子メカニズムを明らかにすることである。 これまでの研究でBtbd3は神経活性によってmRNA発現量や総タンパク質量に変化が生じないことがわかっている。そこで、神経活性によってBtbd3のタンパク質修飾の状態が変わる可能性を考えた。その結果、Btbd3は神経細胞でリン酸化される可能性を見出した。またBtbd3は神経活性に応じてRho活性を上昇させることを見出し、このRho活性の上昇はリン酸化阻害剤によって抑制されることがわかった。さらにBtbd3とplexinが結合し、Rho活性を制御していることを明らかにした。またBtbd3は神経活性を受け続けると、細胞内局在を変え、細胞骨格へ移動することも見出した。 以上の結果から、Btbd3は神経細胞内でタンパク質修飾の状態や細胞内局在、結合するタンパク質に違いがあり、この状態の違いが樹状突起の除去または維持の選択性に重要である可能性が示唆された。
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