研究課題/領域番号 |
26830025
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
木村 有希子 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別協力研究員 (70581122)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 遊泳 / MLR |
研究実績の概要 |
脊椎動物のロコモーションを制御する主要な経路のひとつに、中脳歩行誘発野(MLR)‐後脳‐脊髄という経路がある。MLRを電気刺激すると、ロコモーションが始まり、刺激の強度に応じてその速度が変化することから、MLRはロコモーションの速度制御にも関与すると考えられる。MLR‐後脳‐脊髄 経路の研究は数多いが、MLRからの情報が後脳、脊髄のどの細胞を介して、どのような情報処理をされているのか、詳細は未解明である。本研究の目的は、ゼブラフィッシュ幼魚の実験操作上の利点を活かして、この経路を明らかにすることである。本年度は、ゼブラフィッシュ幼魚で未同定であるMLRの同定マーカーとして使用可能と予想していた転写因子の一つを発現するニューロンの解析を行った。このニューロンがMLRであることを証明するために、光遺伝学ツールであるチャネルロドプシンをこのニューロンに発現する魚を作製し、光により強制的に活動させた。しかし、予想に反して、一定の条件下ではロコモーションが誘起されるものの、信頼性が低く、刺激強度と遊泳速度の関連性もなかった。さらに、このニューロンはMLRからの投射を受けることが強く予想されるニューロン群には投射せず、別のロコモーションに関わるニューロン群に投射している可能性が高いことが分かった。この結果はこのニューロン群は、MLRではないことを示しており、本年度の目的であったゼブラフィッシュ幼魚のMLR同定は成功しなかった。そのため、今後、MLRの同定のために新たな遺伝子組み換え魚を作製する必要が生じた。一方、新しく登場したゲノム編集技術CRISPRを用いて、以前の技術より容易に遺伝子組み換え魚を作製できることを示唆する報告が2013年にあったため、本研究における遺伝子組み換え魚作製をサポートする目的で、CRISPRによる遺伝子組み換え魚作製技術を新たに確立し、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度は、「ゼブラフィッシュ幼魚におけるMLRの特定と遊泳中の活動解析」、「MLRから入力を受ける後脳ニューロンの異なる遊泳速度での活動解析」を行う予定であった。しかし、研究実績の概要に記した通り、ゼブラフィッシュ幼魚におけるMLRの同定に成功していない。当初、MLRと予想していたニューロンの解析と、遺伝子組み換え魚の新たな作製方法の確立に時間を費やしたため、後脳ニューロンの解析は行えなかった。そのため、達成度としてはやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
MLRを同定するために、遊泳中幼魚の脳で、カルシウムイメージングを行う。ゼブラフィッシュ幼魚の全脳イメージングは既に報告があるが、報告されているデータでは解像度が低く、また全てのニューロンでイメージングを行っているため、MLR領域の同定は難しい。中脳領域のニューロン集団を同定できる複数の遺伝子組み換え魚を作製し、従来の報告より、限られたニューロン集団で、限られた領域のイメージングを行い、MLRを同定し、解析を行う。 MLRから入力を受ける後脳ニューロンの異なる遊泳速度での活動解析に関しては、当初計画通り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度で記したように、計画の進行が遅れているため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、複数の遺伝子組み換え魚の作製を行う必要が生じたため、繰越額を使用する予定である。
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