研究課題/領域番号 |
26830027
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡 雄一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30614432)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 神経解剖学 / 神経回路網 / 神経発生・分化 / 分子神経生物学 / 大脳皮質 / 脳梁 / ニューロン・サブタイプ |
研究実績の概要 |
本研究は大脳皮質に存在する多様なニューロンが、それぞれのサブタイプに応じて特徴的な神経回路を形成する機構を明らかにすることを目的とし、特に同じ領野の同じ層に混在していながら異なる神経回路を形成する連合ニューロンと交連ニューロンの軸索投射機構を解析する。我々は、マウス大脳皮質1次体性感覚野(S1)に存在する連合ニューロン(1次運動野M1に投射する)と交連ニューロン(対側のS1に投射する)の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ解析により比較し、連合ニューロンでの発現が優位な候補遺伝子を得ていた。これらの連合ニューロンにおける発現をM1からの逆行性トレーシングとin situハイブリダイゼーション(ISH)との2重標識を行って確認していた。本年度はマイクロアレイ・データの再解析を行い、交連ニューロンに優位に発現する候補遺伝子として10遺伝子程度選び、大脳皮質切片に対するin situハイブリダイゼーションを行った。シグナルが得られたものについて、対側S1からのトレーシングとISHとの2重標識により交連ニューロンでの発現を確認しているところである。ニューロン・サブタイプに特異的なプロモータでCreを発現させ、それぞれの神経回路の構造や接続先のニューロンを可視化するため、pCAG-loxP-stop-loxP-Lyn-GFPおよびpCAG-loxP-stop-loxP-WGAのコンストラクトを作製した。また、whole mountでこれらを観察できるように、脳の透明化と免疫組織染色を組み合わせたiDISCO法の検討を行い、大脳半球の大きさで可視化できる条件を設定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交連ニューロン特異的遺伝子のスクリーニングにやや時間がかかっているが、プロモータ-Creと組み合わせて用いるコンストラクトはほとんど準備できているので、プロモータが得られたらすぐに実験を開始する態勢は整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、できるだけ早い段階で交連線維を標識できるプロモータを同定し、得られ次第、プロモータ-Creのコンストラクトを作製し、上記のコンストラクトと一緒にエレクトロポレーションを行って大脳皮質に導入し、回路構造の可視化(GFP)と接続先ニューロンの同定(WGA)を行う。連合ニューロン特異的プロモータやM1と対側S1の両方に投射するニューロンのプロモータで同様の実験を行って、それぞれの結果を比較する。さらに、それに引き続き、軸索ガイダンス分子のノックダウン実験や、Lmo4強制発現によるサブタイプ変換実験を行って、その軸索投射様式への影響を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プロモータの同定など、一部の実験が当初想定よりも時間がかかっているため、使用するタイミングが次年度になるものが生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画全体を通じて子宮内電気穿孔法による遺伝子導入を頻繁に行う必要があり、妊娠動物の購入費用および飼育費用を多めに計上している。プロモータ同定のためのコンストラクト作成に必須となるBACクローンの購入に20万円程度を要する。また、日本神経科学会、日本神経化学会と日本解剖学会で発表を行う予定であり、これらに要する旅費を計上した。
|