研究課題
これまでに申請者はチロシン脱リン酸化酵素SHP-1を阻害することにより、中枢神経損傷後に起こる運動機能の自然回復が促されることを見いだした。また、SHP-1を介して軸索伸長が阻害される分子メカニズムを解明した。SHP-1は、軸索伸展を促進するTrkB受容体を脱リン酸化することで不活性化し、軸索再生を阻害することが明らかになった。これらの知見は、SHP-1が神経回路の再構築を妨げることを示唆している。このことから、SHP-1を抑制する手法が中枢神経再生治療に貢献する可能性が推察されたが、SHP-1は全身に発現するため、SHP-1阻害薬を用いることは副作用を生じる可能性が高い。SHP-1には、C末端領域の異なるアイソフォームSHP-1Lが存在するが、その機能は明らかになっていない。本研究では、SHP-1, SHP-1Lの両アイソフォームの神経細胞に対する作用を明らかにし、SHP-1、SHP-1Lの下流因子が治療標的となる可能性について検証する事を目的とした。マウス大脳皮質細胞に、SHP-1およびSHP-1Lを遺伝子導入した結果、細胞死が誘導された。この機能は、脱リン酸化酵素活性によるものであると推察された。また、SHP-1の結合因子候補を探索し、SHP-1, SHP-1Lの下流因子の同定を試みた。その結果、複数の結合因子候補を同定した。現在、これらの結合因子候補がSHP-1を介してアポトーシスを制御している可能性について検証している。
すべて 2015 その他
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Developmental Cell
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