アルツハイマー病発症前段階からの治療介入を目指して、その段階を血液で簡単に測定できるバイオマーカーを探索した。 以前、我々はアルツハイマー病患者では血清中のアルブミンがAβと結合しにくくなり、脳でも同様のことが起こっていると考えられ、脳内Aβがアルブミンに結合して輸送されず蓄積すると報告した(Geriatr Gerontol Int. 14: 716-723: 2014)。 今回、アルブミンがAβと結合しにくくなっている理由として、①老人斑中にCuが多い(Journal of the Neurological Sciences 158: 47-52: 1998)、②CuはAβと結合し凝集させやすい(Br J Pharmacol. 163: 211-219: 2011)、③アルブミンは元々Cuと結合しやすい、の3つの理由から、アルツハイマー病患者ではアルブミンがCuと結合しにくくなり、アルブミン-Cu-Aβ複合体ができず、Cu-Aβ複合体が多くなり、それは凝集し、老人斑として脳内に沈着するとの仮説をたてた。 そこで、当院に通院する患者の銅親和性アルブミンの濃度を測定したが、非認知症群>軽度認知症群>アルツハイマー病群の順に低下することが分かった。 以上の研究成果を、平成27年度の日本神経学会総会にて発表した。 今後、対象患者数、対象疾患を増やして検証する予定であったが、大学を退職したため、研究を中断した。
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