研究課題/領域番号 |
26830039
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
山本 由美 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (10614927)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CADASIL / 血管性認知症 / 脳小血管病 |
研究実績の概要 |
脳小血管病の特徴的病理所見として血管平滑筋細胞の変性・消失と血管反応性異常が挙げられ、血管平滑筋細胞の機能異常が病態機序に密接に関係していると考えられる。血管平滑筋細胞は非筋細胞に近い性質を有しており、フィラメント状のF-アクチンが大部分を占める心筋や骨格筋に比べ、アクチンの単量体であるG-アクチンが比較的多く存在している。血管平滑筋細胞では、血圧上昇に伴いG-アクチンが重合してF-アクチンが形成され、収縮能が増強される。 本申請課題では、Notch3変異によるCADASILの病態機序として、①Notch3変異により下流のRasファミリーG蛋白質のRhoAシグナルに異常が起こり、②RhoAで制御されるアクチン代謝が障害されることで ③ 平滑筋細胞の変性(細胞死)と血管反応性の障害に至り、④ 脳血流の低下および血管周囲排出経路による老廃物やNotch3細胞外ドメイン凝集物の排出の障害を経て ⑤白質障害が起こる という仮説を立て 、Notch3変異とアクチン代謝の関係の解明とアクチンをターゲットとした治療法の探索を行うことを目的とした。 変異Notch3トランスジェニックマウスの大動脈、髄膜血管、腎血管などの血管でもF/Gアクチン比を測定した。すると、大動脈よりも細動脈などの小血管で野生型と変異型に有意差がみられることがわかった。これは、CADASILが脳小血管病であることと整合性があり、マウス大動脈由来平滑筋初代培養を使った実験では病態の変化を検出しにくい可能性がでてきた。そこで、マウスの脳から血管平滑筋初代培養細胞(CVSMC)を採取し、この細胞でNotch3変異がアクチン代謝におよぼす影響を調べた。同時に、CADASIL iPS細胞由来壁細胞でも再現性を評価した。結果は、予想通りNotch3変異を持つ壁細胞では細胞内actin代謝に異常が見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していたアクチン代謝の評価を、マウス組織、マウス脳血管由来平滑筋初代培養およびiPS細胞由来壁細胞で行い予想通りの結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の結果を基に、アクチン代謝異常のメカニズムの解明および、治療薬候補の選定を行う。まず、アクチン代謝に関係していると報告されているRhoAシグナル経路の活性を正常型および変異型Notch3をもつマウス脳血管平滑筋細胞およびiPS細胞由来壁細胞で評価する。さらに、アクチン重合阻害剤であるLatrunculinやCytochalasin D、選択的ROCK (Rho- associated coiled-coil forming kinase) 阻害薬の塩酸ファスジルなどにより、アクチン代謝異常およびその他の機能不全が改善されるかを検討する。 評価項目: ①F-/G-アクチン比とアクチンフィラメント立体構造 ②圧または伸展誘導性のアクチン再編成効率 ③血管病理(血管平滑筋変性、凝集物GOMの沈着、血管壁肥厚)の発症遅延・予防 (in vivo) ④白質障害の有無 (in vivo)
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度にDNA microarrayによる遺伝子発現解析を行う予定だったが、一度に委託する最低数の8サンプルのうち4サンプルしか得られていなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度にサンプルが集まり次第、遺伝子発現解析を外部委託して行う。
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