研究課題
神経細胞は高度に極性化した細胞であり、通常分化の過程で1本の軸索と複数の樹状突起を形成する。しかしながら、神経細胞がいかにして極性を獲得し維持するか、その分子機序の理解は未だ限定的なものであった。これまでの知見より、軸索も樹状突起も共通の未成熟な神経突起から形成されることが明らかになっている。しかしながら、どのようにして未成熟な神経突起のうち一本のみが軸索となり、他の未成熟な突起の軸索への分化が抑制されることで樹状突起へと分化するのかその分子機序については未だに判っていない。そこで本研究では、一本のみの軸索が形成される分子機序を解明することを目的とする。前年度では、複数の軸索形成を抑制する分子機構としてRhoA/Rho-kinase経路が関与していることが示唆された。今年度は、神経栄養因子NT-3の局所活性に応答して、軸索から細胞体にかけて長距離Ca2+伝搬が引き起こされること、またそれによってCaMKK/CaMKI経路が細胞体で活性化することを見出した。さらに、新規に開発したリン酸化プロテオミクス解析によってCaMKIの基質を網羅的に同定した。その中には、RhoAの活性化因子Rho GEFも含まれていた。以上の結果より、軸索での細胞外因子NT-3の増幅によって、長距離のCa2+伝搬を介してCaMKI/Rho GEF/RhoA/Rho-kinase経路が複数の軸索形成を抑制することで樹状突起への運命決定を担っている可能性が示唆された。さらに今年度は、神経細胞の極性形成に関する分子機序についての総説を発表した(髙野ら., Development, 2015)。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Development at Glance
巻: 142 ページ: 2088-2093
10.1152/physrev.00025.2014. Review.
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/Yakuri/index.htm