研究課題/領域番号 |
26830046
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小峯 起 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (00456211)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 自然免疫 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスにおける自然免疫経路(TRIF経路)遮断により、病態の進行が加速し、ミクログリアからのケモカイン発現低下に伴う免疫細胞の脊髄内浸潤の減少に加えて、異形の活性化グリア細胞が増加することから、これらの免疫細胞が、活性化グリア細胞を排除し、神経保護的に機能している可能性が示唆された。そこで、本研究では、免疫細胞による活性化グリア細胞排除機構の解明を目指し、研究を進めている。脊髄内浸潤免疫細胞の解析により、浸潤免疫細胞は、異形の活性化グリア細胞に発現がみられた細胞死を誘導する受容体であるFasのリガンドであるFasLを発現していることを明らかにし、脊髄に浸潤した免疫細胞が異形の活性化グリア細胞に細胞死を誘導しうることを明らかにした。また、抗体やサイトカインの腹腔内投与により、関与が予想される脊髄内浸潤免疫細胞を個体レベルで増加及び減少させたALSモデルマウスを作成できたことをフローサイトメーター解析により確認できた。次年度以降、これらのマウスの生存期間の解析及び異形の活性化グリア細胞数及び細胞死について解析を行い、異形の活性化グリア細胞の排除における脊髄浸潤免疫細胞の関与について明らかにする。さらには、末梢免疫組織との連関を明らかにするため、ALSモデルマウスの遺伝的背景を細胞性免疫優位なC57BL/6マウスから液性免疫優位なBALB/cマウスに戻し交配によって変化させたALSモデルマウスを作成したところ、生存期間の短縮がみられることが明らかとなった。次年度以降、これらのマウスの脊髄内浸潤免疫細胞や異形の活性化グリア細胞数や細胞死などについて比較し、末梢免疫組織との連関についても明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していた免疫細胞と活性化グリア細胞の共培養を用いた免疫細胞における活性化グリア細胞死誘導の直接的な検証について、ALSモデルマウス脊髄組織で見られた異形の活性化グリア細胞を培養レベルでは再現することができなかったため、個体レベルでこれらの免疫細胞を増加及び減少させたALSモデルマウス作成を優先して行った。優先した個体レベルで脊髄内浸潤免疫細胞を増加及び減少させたALSモデルマウスの作成については、計画通り、目的の免疫細胞の脊髄内浸潤が増加及び減少していることをフローサイトメーター解析により確認できた。また、遺伝的背景をBALB/cマウスへと戻し交配したALSモデルマウスも計画通り得られ、遺伝的背景がC57BL/6であるALSモデルマウスに比べ、生存期間の短縮が見られることが確認できた。以上のことからおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
個体レベルで脊髄内浸潤免疫細胞を増加及び減少させたALSモデルマウスの生存期間及び異形の活性化グリア細胞数及び細胞死について解析を行う。また、末梢免疫バランスを液性免疫優位環境へと変化させたALSモデルマウスを用い、脊髄内浸潤免疫細胞や異形の活性化グリア細胞数や細胞死などについて解析を行い、細胞性免疫優位環境のALSモデルマウスと比較する。以上のように多面的な解析を通じて、筋萎縮性側索硬化症における免疫細胞による活性化グリア細胞制御機構について明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、共培養実験の計画を変更したこと、及び実験動物飼育施設の改修等により、投与実験に用いているALSモデルマウス個体数の確保に時間を要しているため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、引き続き抗体やサイトカインの腹腔内投与により脊髄浸潤免疫細胞を増加及び減少させたALSモデルマウスを作成し、解析するため、投与に用いるサイトカインやフローサイトメーター及び組織解析に用いる抗体等を購入予定である。その他、本研究課題の遂行に必要な消耗品(分子生物学的実験用試薬、抗体、培地等)についても購入予定である。また、国内外の学会に参加し、研究発表を行いたいと考えている。
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