研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスにおける自然免疫経路(TRIF経路)遮断により、病態の進行が加速し、ミクログリアからのケモカイン発現低下に伴う免疫細胞の脊髄内浸潤の減少に加えて、異形の活性化グリア細胞が増加することから、これらの免疫細胞が、活性化グリア細胞を排除し、神経保護的に機能している可能性が示唆された。そこで、本研究は、免疫細胞による活性化グリア細胞排除機構の解明を目指し、実施した。抗体やサイトカインの腹腔内投与により、関与が予想された脊髄内浸潤免疫細胞を個体レベルで増加及び減少させたALSモデルマウスを作成し、これらのマウスの生存期間及び異形の活性化グリア細胞数及び細胞死について解析を行ったところ、予想に反し、ほとんど差が見られなかった。また、TRIF経路遮断により異形の活性化グリア細胞の細胞死が減弱することが判明した。以上のことからALSにおいてTRIF経路は、異形の活性化グリア細胞の自己細胞死を誘導することにより、神経保護的に機能している可能性が示唆された。本研究結果は、神経変性疾患における自然免疫経路の新たな機能として病態解明や治療標的の同定につながる可能性が考えられる。さらには、末梢免疫組織との連関を明らかにするため、ALSモデルマウスの遺伝的背景を細胞性免疫優位なC57BL/6マウスから液性免疫優位なBALB/cマウスに戻し交配によって変化させたALSモデルマウスを作成したところ、生存期間の短縮がみられること、浸潤免疫細胞数及びミクログリアに変化が見られることが判明した。そこで、変化の見られた浸潤免疫細胞及びミクログリアに着目し、病態に関与する細胞や末梢免疫関連分子について解析を行ったところ、ミクログリアの生存や増殖に関与する分子を同定することができた。
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EMBO Molecular Medicine
巻: 8 ページ: 1421-1437
doi: 10.15252/emmm.201606403.
http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/mnd/index.html