2015年度までに、マウス胎仔大脳皮質由来の神経前駆細胞を用いた実験から、RanGTP activating protein であるRanGAP1がニューロン分化において、短時間で脱SUMO化を受け、分解されることを示した。また、その過程に、脱SUMO化酵素のSenp2が関与することを明らかにした。さらに、RanGAP1の急激な発現減少は、DNA複製に必要なCdc6の細胞内局在を、核から細胞質へ移動させ、細胞増殖を抑制し、ニューロン遺伝子を上昇させることを明らかにした。最終年度では、論文投稿に必要な追加の実験を行った。まず神経前駆細胞から分化するアストロサイトにおいて、Cdc6の細胞内局在を検討したところ、Cdc6は主に核内で発現していた。次に、GFPにHIV-revの核外移行シグナル(NES)と、SV-40の核局在化シグナル(NLS)を付加した融合蛋白質(vNES-vNLS)を、in vitroエレクトロポレーション法で神経前駆細胞へ導入し、アストロサイトへ分化させたところ、vNES-vNLSは主に核内で発現していた。さらにCdc6に蛍光蛋白質のtd-Tomatoを付加した融合蛋白質(Cdc6-Tmt)を分化させたアストロサイトへ発現させたところ、Cdc6-Tmtはニューロンとは異なり、主に核内で発現していた。これらの結果は、核-細胞質間輸送の変化が、不可逆的な細胞周期の停止に特有であることを改めて示したものであると考える。
|