研究課題
本研究課題は,オリゴデンドロサイトの分化・成熟・ミエリン鞘形成および脱髄疾患後の再ミエリン化に関わるタンパク質チロシンリン酸化シグナル伝達機構の解明を目的としている。タンパク質チロシンリン酸化シグナルは,チロシンリン酸化酵素(PTKs)とチロシン脱リン酸化酵素(PTPs)によって制御される。これまでに我々は,受容体型PTPに属するPTPRZがオリゴデンドロサイトの分化に抑制的に働くことを明らかにしてきた。PTPRZは,ミエリン鞘の形成が開始される適切な発達時期までオリゴデンドロサイトの分化を抑えておく役割を担うと想定しているが,ミエリン形成時期にPTPRZの発現量は大きく変化しておらず,どのような仕組みでその抑制が解除されるのかは,不明であった。そこで当該年度では,オリゴデンドロサイト分化の抑制が解除される仕組みと,オリゴデンドロサイトの分化・成熟に関わるPTPRZの細胞内シグナル伝達機構の解明を目指した。当該年度は,再ミエリン化についてクプリゾンによって誘発される実験的脱髄モデルを用いて,Ptprz欠損マウスの再ミエリン化が促進していることを見出した。また,脱髄病態時における特定の分子種発現変化を見出し,Ptprz欠損による再ミエリン化促進メカニズムの説明も可能になった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに研究は進行している。クプリゾンによって誘発される実験的脱髄モデルにおいて,Ptprz欠損マウスの再ミエリン化が促進していることに関して論文作成中である。
再ミエリン化時に発現レベルが変化した分子によってPTPRZ下流のシグナルに変化が生じることを証明する。また,PTPRZの基質分子の中でオリゴデンドロサイト系譜細胞にて発現していた分子についてリン酸化状態とその機能的意義を明らかにすることによって,予定通り本課題の目標を全てが達成できると判断している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0119361
10.1371/journal.pone.0119361
Cell Reports
巻: 10 ページ: 1585-1598
10.1016/j.celrep.2015.02.011.