研究課題/領域番号 |
26830053
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 博紀 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (40568854)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 成長円錐 / 軸索ガイダンス / VAMP7 / 極性化 / small GTPase |
研究実績の概要 |
発生期,神経軸索はガイダンス因子に応じて進路を転換することで正しい標的まで到達する。進路を転換するには,成長円錐局所での極性化が不可欠である。この極性化を制御する機構のひとつとして,細胞内小胞の輸送が挙げられる。これまで,小胞の機能として,形質膜との融合による接着分子やガイダンス因子受容体等の膜貫通型分子の挿入が重要だと考えられてきた。しかしながら申請者は,形質膜との融合に依らない極性化制御という,細胞内小胞の新しい機能の存在を示唆するデータを得た。そこで本研究課題では,細胞内小胞のシャトリングによる成長円錐極性化制御機構の詳細を解明する。 平成26年度は,成長円錐において中心部-先端部間をシャトリングする,vesicle-associated membrane protein 7 (VAMP7) 陽性小胞動態とアクチン重合促進因子の活性化の相関関係の解明を試みた。アクチン重合促進因子として,small GTP-aseであるRacおよびCdc42に着目した。これらの活性を定量するため,遺伝子コード型のセンサーをニワトリ胚由来脊髄後根神経節細胞に発現させた。RacおよびCdc42のセンサーを発現した成長円錐にこれらの活性化剤を作用させたが,FRET効率の変化は検出できなかった。阻害剤を加えるとFRET効率が減少した。また,センサーのYFPを退色させるとCFPの蛍光が大幅に増大したことから,成長円錐におけるRacおよびCdc42の定常状態での活性が非常に高いことが活性化を検出できない原因だと考えられる。そこで,Cdc42結合ドメインにGFPを付加したキメラタンパク質を発現させ,全反射照明蛍光顕微鏡法によってCdc42の活性変動の検出を試みた。活性化剤の添加によって蛍光が増大したことから,活性化を検出できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当所の計画では,VAMP7小胞動態とRacあるいはCdc42活性変動との相関を解析する予定であった。しかし,成長円錐においてRacおよびCdc42の定常状態での活性が非常に高かったため,これらの分子の活性化を捉えることが困難であった。最終的には全反射照明蛍光顕微鏡法を用いて活性化を捉える手法を確立したが,相関の解析までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当所の計画では,FRET型センサーと赤色蛍光タンパク質を付加したVAMP7を用いて,2波長励起3波長蛍光のシステムで小胞動態とRac,Cdc42の活性変動の相関を解析する予定であった。しかし,FRET型センサーではRac,Cdc42の活性化を捉えることができず,全反射照明蛍光顕微鏡法を用いることで 初めて活性化を捉えることに成功した。このため,相関解析のためには3波長励起3波長蛍光のシステムが必要となる。このようなシステムが構築できれば,相関解析を行う。 VAMP7小胞のカーゴを同定するため,RacやCdc42,あるいはそれらの活性化酵素に光活性化型蛍光タンパク質を付加し,VAMP7小胞との同時ライブイメージングを行う。これによりカーゴを同定し,VAMP7小胞によるアクチン動態制御機構の詳細解明を試みる。 また,VAMP7が成長円錐極性化に果たす役割を検討するため,VAMP7のノックダウンを行い,成長円錐ガイダンスへの影響を解析する。
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