研究課題/領域番号 |
26830054
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
宮本 幸 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (50425708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 髄鞘 / グリア細胞 / 神経細胞 / 共培養 / 細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、末梢神経系の髄鞘発生過程の変遷をin vitroで忠実に再現できる独自のグリア細胞ー神経細胞共培養系を用いて、髄鞘発生メカニズムの解明を行い、その後、得られた結果をもとに髄鞘変性症の病態発症機構を明らかにすることを目的としている。当該年度は、ライブラリーを利用して髄鞘形成の促進または抑制に関与する分子のスクリーニングを開始した。その結果、髄鞘形成を促進するキナーゼ受容体が同定された。この受容体は、髄鞘発生の初期から後期にわたってグリア細胞膜上に特異的に発現しており、神経細胞からのシグナルを受容することにより、髄鞘発生過程を綿密に制御していることが判明した。また、この受容体下流には、以前申請者らが明らかとした末梢の髄鞘発生過程において中核を担うキナーゼが介在しており、髄鞘形成過程を担う分子機構の一端が明らかとなったと同時に、本スクリーニング法がグリア細胞と神経細胞の複雑な相互作用を研究にする上で適した手法であることが示された。さらに、これらの結果をマウス個体レベルで検証するためにキナーゼ受容体の遺伝子改変マウスを作製したところ、髄鞘形成に影響を及ぼす結果が得られ、in vitroでの結果が再現された。これらの結果を踏まえ、今後は本受容体が脱随時においても積極的な機能を果たしているか否かを新たな目標として研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度において以下の知見が得られた。1)キナーゼ受容体が末梢神経系の髄鞘発生に関与することを見出し、マウス個体レベルでもその普遍性を明らかにした。これは平成28年度以降に予定していた計画にも到達したことを意味している(Mol. Biol. Cell.2015)。2)Arf6とその制御因子であるcytohesin-2が末梢神経系の発生に関与することを、インビボレベルで明らかにした(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2015) 。3)インビトロで得られた結果を応用することにより、神経系の髄鞘変性疾患をインビトロレベルでモデル化することに成功し、その発症メカニズムの一端を明らかにした(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2015)。以上、一部は当初の予定よりも早く研究成果を得ることができたため、本研究は計画以上に進展していると言える。今後、神経系の発生に関与する分子ネットワークを明らかにするとともに、それらの結果を病態研究へ応用したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、共培養系を用いたスクリーニングを継続すると共に、現在までに明らかとなっている髄鞘形成に関与する分子を共培養系に還元し、神経細胞との相互作用の下でこれらの分子がどのように機能しているかを判定していく。その後、共培養系を用いて機能同定した分子のうち、分化や生存に深く関わるキナーゼの効果を検証するため、髄鞘形成グリア細胞特異的に標的キナーゼを阻害できるトランスジェニックマウスを作製する。マウス表現型の評価法は、神経の免疫染色と電子顕微鏡による髄鞘微細構造の観察によって行う。さらに、このマウスを髄鞘変性症のモデルマウスと交配させることにより、髄鞘変性症に対する治療効果の有無を検証する。以上、本研究により、末梢神経系の髄鞘発生、および髄鞘変性に関する知見が深まるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
スクリーニングに使用する消耗品に関しては、包装最小単位で購入が可能となり、スクリーニングに向けた単位で購入する必要がなくなった。また、実験動物の使用を極力抑える工夫をしたため、動物購入費が当初予定より減った。さらに、旅費に関しては国際学会(海外)や遠方で行われる国内学会への参加が難しい家庭状況のため、支出予定分が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は計画と計画以上の結果を得るための研究を加速するため、消耗品を中心に使用していく予定である。
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