研究課題
平成27年度は、精子運動能に関与している可能性のある8遺伝子のKOマウスを作製した。平成26年度に作製したが解析できなかったKOマウスと合わせて、今年度は5遺伝子のKO雄マウスの妊孕性を確認した。結果は、2遺伝子のKO雄マウスが、精子運動能の低下のために不妊であった。一方、残りの3遺伝子のKO雄マウスは不妊ではなかった。今後はこれら不妊マウスの詳細な解析を行っていく予定である。また、平成26年度に作製した、Ppp3r2・KOマウスの解析を行った。このKOマウスは精子尾部の一部分(中片部)が屈曲できないために不妊になった。PPP3R2はカルシウム依存性の脱リン酸化酵素であるカルシニューリンの調節サブユニットであるが、触媒サブユニットであるPPP3CCと結合すると考えられている。そこで、精子を用いて免疫ブロット法を行うと、Ppp3r2・KO精子ではPPP3R2に加えてPPP3CCも検出されなかった。よって、PPP3CCとPPP3R2が結合して互いに安定化していることを確認できた。カルシニューリン阻害剤であるシクロスポリンAとFK506は免疫抑制剤として汎用されているが、これら薬剤を2週間、野生型の雄マウスに投与すると、Ppp3r2・KOマウスと同じように精子中片部が屈曲せずに、雄マウスは不妊になった。投与を中止すると1週間で妊孕性が回復したことから、PPP3CC/PPP3R2を特異的に阻害できれば、短期間で効果があり可逆的な男性避妊薬の開発に繋がる可能性がある。また、outer dynein arm docking complexの構成因子であるCCDC63のKOマウスについては、鞭毛が正常に形成されず短くなるために、精子が運動能を示さず不妊になることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
おおむね計画通り8遺伝子のKOマウスを作製することができた。このうち2遺伝子では、精子運動能の低下のためにKOマウスが不妊になった。よって目標であった精子無力症のモデルマウスとなりうる。さらにPPP3CCとPPPP3R2で構成されるカルシニューリンが短期間で効果のある男性避妊薬の標的となりうることを示せた。
不妊の傾向を示したが、まだ解析が終了していない6遺伝子のKOマウスの表現系解析を行う予定である。また精子運動能に関与すると考えられる遺伝子のKOマウス作製を引き続き行う。来年度も10遺伝子ほどのKOマウス作製を計画している。
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Science
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Int. J. Mol. Sci
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http://www.egr.biken.osaka-u.ac.jp/information/results/index.html