研究課題/領域番号 |
26830058
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
唐 策 東京理科大学, 生命医科学研究所, 助教 (00572166)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | C型レクチン / 腸内細菌叢 / サイトカイン / 遺伝子欠損マウス |
研究実績の概要 |
平成27年度において、本研究の重要な実績は、糖鎖認識受容体C型レクチンファミリーメンバーDectin-1の腸管内シグナルを阻害することによって、抗菌タンパク・抗菌ペプチドを誘導できなくなるため腸内細菌の乳酸桿菌が過剰増殖し炎症抑制に働く制御性T細胞Tregが誘導され大腸炎の発症を抑制するという前年度の研究内容を更に進んだ後、科学論文として投稿し、平成27年8月にCellの姉妹科学誌Cell Host & Microbe(微生物学領域の世界Topジャーナル)に掲載されることです(Cell Host Microbe. 2015;18(2):183-97.)。論文の掲載と伴に、研究内容を国内新聞社日本経済新聞、日刊工業新聞など合計6社に科学ニュースとして取り上げられ、日本テレビからの取材も受け、4月30日夜の番組「世界一受けたい授業」で研究内容の紹介をする予定になっている。 一方、平成27年の研究計画に従って、次の研究テーマにも順調に進んでいた。本研究当初に予定していたメラノーマ悪性黒色腫の転移肺がん転移モデルが、去年e-Lifeという科学誌にほぼ同様な研究論文が掲載されたことを受け、前段階の研究に明らかになっていたDectin-1シグナルによる腸内細菌の変動が腸管恒常性の維持に重要であることに基づいてC型レクチン受容体Dectin-1の大腸がんの発症・発展における役割の解析に変更した。自然発症家族遺伝性大腸腺がんのマウスモデルであるがん関連遺伝子APCの遺伝子mutantマウスとDectin-1遺伝子欠損マウスと交配させることによって、腸管ポリープ、そして線がんの発症にはDectin-1シグナルが関与していることが明らかとなった。一方、抗生物質投与による腸内細菌を除去しても発症程度には変化がなかったため、大腸炎の発症を増悪化するメカニズムとは異なり、Dectin-1は腸内細菌の変動と無関係で大腸がんの発症に関与することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度で、当初の計画に従い研究を実施した上で、前年度の研究内容を論文として発表し、更に新聞・テレビニューズを介して研究成果を国民に発信したことに限らず、Dectin-1のシグナルを阻害する低分子量βグルカンを用いる腸内細菌・腸管恒常性の維持を目的とする健康食品の開発、そしてDectin-1を標的とした大腸炎の治療・予防と目的とする新薬の開発に大変重要な科学根拠を提供し、社会還元・社会貢献に力になるため、当初の予定以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた研究結果に基づいて、平成28年度に結核菌ワクチンであるBCGの接種によるTh1・Th17の細胞応答・メモリーT細胞の分化におけるDectin-1の役割、そしてDectin-1のリガンド投与による結核菌のワクチン効果の増強作用を重点として解析する予定であり、最終的にDectin-1シグナルを標的とした新型結核菌ワクチンの開発に役に立つ科学的な根拠を得る目標として研究を進展していこうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究内容の国際発表に当たって、海外出張の旅費合計約30万円が発生する予定でしたが、財団から海外travel awardを当たったため、その分を残した。 一方、当初の研究計画が研究時間の都合上で平成28年度実施予定の計画とは前後したため、使用金額も前後し、約15万円の差額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の計画通り使用する予定であり、特に問題はないと考えている。
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