研究課題/領域番号 |
26830059
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
片山 健太郎 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50508869)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ゴルジ体 / 軟骨基質 / 細胞内輸送 / レクチカンファミリー / Giantin / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
表記研究課題を達成するため、平成26年度は下記の研究を進めた。 1.軟骨基質の細胞内輸送におけるGiantinの役割の解析 小胞繋留因子Giantinの軟骨基質の細胞内輸送における役割を明らかにするために、正常ラットおよびGiantinを欠損するOCDラットから繊維芽細胞および軟骨細胞を単離して単層培養を行い、アグリカンおよびリンクプロテインの発現を免疫蛍光法により検出することを試みるとともに、GFP融合リンクプロテイン発現するコンストラクトを導入し、その発現を調べた。その結果、単層培養では内因性のアグリカンおよびリンクプロテインの発現量が非常に低く、正常個体由来の軟骨細胞においてもアグリカンおよびリンクプロテインのシグナルがほとんど検出されなかった。GFP融合リンクプロテイン発現コンストラクトの導入実験では、正常およびOCDラット由来のどちらの繊維芽細胞においても、FPのシグナルは観察されなかったが、軟骨細胞では正常およびOCDラット由来のどちらの細胞においてもGFPのシグナルが観察された。 2.レクチカンファミリーの分泌におけるGiantinの役割の解析 細胞外基質のレクチカンファミリーの分泌におけるGiantinの必要性を明らかにするために、OCDラット胎仔の頭部切片を作成し、レクチカンファミリーに属するバーシカン、ブレビカン、ニューロカン、アグリカンの免疫染色を行った。その結果、OCDラットの頭部の軟骨組織において、アグリカンの減少が確認され、長管骨以外の軟骨組織においてもアグリカンの減少が生じていることが明らかになった。一方、バーシカン、ブレビカンおよびニューロカンの発現に関しては、OCDラットと正常ラットの間で顕著な差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Giantinはゴルジ体における輸送小胞の繋留に関わる小胞繋留因子の一つであり、その機能を喪失したOCDラットでは軟骨基質の減少を伴う骨軟骨形成不全症を呈することが明らかにされている。しかし、Giantinが関与する細胞内輸送系と輸送される分子との関係に関しては不明なままである。本研究では軟骨基質および細胞外基質のレクチカンファミリーの細胞内輸送におけるGiantinの機能を明らかにすることを目的とした研究を進めている。 本年度の遺伝子導入実験の結果から、軟骨基質の輸送には軟骨細胞が有すると考えられている特別な細胞内輸送系が重要であることを示唆する結果が得られた。また、アグリカン以外のレクチカンファミリーのメンバー(バーシカン、ニューロカン、ブレビカン)に関しては、OCDラットにおいても減少している像は認められなかったことから、Giantinは軟骨組織におけるアグリカンの分泌には重要であるが、他のレクチカンファミリーの分泌には必須ではないと考えられた。 軟骨基質の輸送において軟骨細胞が有すると考えられる細胞内輸送系が重要である事を示唆する結果、およびアグリカン以外のレクチカンファミリーの分泌には、Giantinが必須ではない事を示す結果が得られた事から、本年度の達成度は(2)おおむね順調に進行している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
軟骨細胞の単層培養では、正常個体の細胞であってもアグリカンおよびリンクプロテインの発現量が非常に低く、その動態を可視化することが困難であった。そのため、単層培養と比較して軟骨基質の発現量が最大100倍程度まで上昇する3D培養を行い、Giantinを欠損するOCDラット由来の軟骨細胞における軟骨基質の動態を調べる予定である。これまでに正常個体由来のアルギン酸ハイドロビーズを用いた軟骨細胞の3D培養およびビーズからの細胞の回収と免疫染色の条件検討が終わっているので、OCDラットからの軟骨細胞の単離が出来しだい、3D培養および、軟骨基質と小胞輸送に関わる細胞内小器官のマーカー分子を用いた免疫染色を行う予定である。 軟骨細胞の3D培養により、Giantinの欠損が軟骨細胞の輸送に及ぼす影響が認められれば、Giantinと相互作用する分子をノックダウンし、その影響を調べる事により、Giantinと協同して細胞内輸送系で働く分子の軟骨基質の輸送における役割明らかにする。 また、積み荷輸送体を同定するためのプルダウンアッセイに使用するコンストラクトの構築を行い、当該実験を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
GFP融合リンクプロテインを発現するコンストラクトの他に、GFP融合アグリカンを発現するコンストラクトを構築し、トランスフェクションを行う計画であったが、アグリカンmRNAのサイズが大きく、全長cDNAのクローニングが出来ず、GFP融合アグリカンのコンストラクトの構築およびトランスフェクションの実験が出来なかったために、次年度に繰り越す研究費が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究結果から、Giantinの欠損が軟骨基質の輸送に及ぼす影響を調べるには過剰発現させた軟骨基質よりも内因性の軟骨基質の動態を調べた方が良いと考えられたため、次年度は当初の計画には無かった軟骨細胞の3D培養を行う予定である。そのため、繰り越した予算は軟骨細胞の3D培養に用いる試薬などの購入に充てる計画である。
|