平成26年度で、我々は新世界ザル・マーモセットの大脳皮質体性感覚野における神経細胞の、構造および活動を生きたまま観察するための手法を確立するために、以下の3点に主に取り組んだ。①本研究では、体性感覚野の神経活動を数mmオーダーで、包括的に観察することが出来るマクロ顕微鏡と、細胞レベルで観察することが出来る2光子顕微鏡の2種類の顕微鏡を使用する。そのため、それぞれの顕微鏡の対物レンズ下で、麻酔状態を維持したマーモセットを観察するためのマーモセット専用の観察台を開発した。②2光子顕微鏡ではμm単位の観察を行うために、微細な個体の動きも大きな影響を受ける。そのためそれらの動きを減弱するための手術方法を確立した。③神経細胞の活動をモニターするためのカルシウムインジケーターを、神経細胞特異的に発現誘導するための手法を確立した。これらにより、麻酔状態における神経活動を観察することに成功した。しかしながら、神経細胞の活動は麻酔下と覚醒下とで大きく異なることが報告されている。そこで平成27年度では、さらに覚醒状態で観察するための手法の開発を行った。①覚醒状態の個体を、拘束するための固定装置の開発。この固定装置の特許を現在申請中である。②固定装置にてマーモセット個体が拘束された時に、動きを減弱させるための馴化トレーニングの開発。これらにより、覚醒状態の神経細胞の活動を観察することが可能になった。 この手法を利用し、足(裏と甲)、太もも、尻尾に対して電気刺激を加えた時の、大脳皮質体性感覚野のどの領域が活性化するのかを、マクロ顕微鏡により、刺激部位の違いによる、刺激応答領域の違いを明確にし、さらに2光子顕微鏡によりその活動領域内の神経細胞の活動を覚醒状態で会観察することに成功した。現在、本研究結果の論文を投稿している。
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