研究課題/領域番号 |
26830065
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岡田 雅司 山形大学, 医学部, 講師 (70512614)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / JNK / Kras / xenograft / 腫瘍発生 / 幹細胞性 |
研究実績の概要 |
申請者は、これまでc-Jun N-terminal Kinase (JNK)経路ががん幹細胞性の維持に関わっている事を報告してきたが、難治がんの一つである膵臓がんのがん幹細胞性の維持において、このJNK経路の役割を明らかにすることを目的として、初年度は以下の研究を行った。PANC-1, PSN1由来膵がん幹細胞株(Cancer stem-like cells: CSLCs)を用いて、JNK特異的阻害薬であるSP600125処理およびJNK遺伝子ノックダウンが種々のがん幹細胞マーカーであるCD133, Sox2, Nanogの発現量を抑制した。さらに、自己複製能評価試験としてsphere形成試験を行い、顕著に減少させることを見出した。また、JNK阻害処理を施したPANC-1 CSLCsをヌードマウスに移植し腫瘍創始能を試験すると、顕著に腫瘍創始を抑制した。in vivoの実験系としては、まず腫瘍細胞をヌードマウスに移植し腫瘍を作製してからJNK阻害薬を全身投与したが、腫瘍形成および増大は抑制されなかった。しかしながら、全身投与後腫瘍を摘出・分散後ヌードマウスに細胞数を変化させながら再移植するとJNK阻害薬投与群は腫瘍を形成しないか、腫瘍を形成しても自然退縮するか殆ど成長が見られなかった。 膵臓がんでは80-95%と高頻度でKras遺伝子の恒常活性化が見られ、またKrasは数あるJNKの上流因子としても知られているので、膵がん幹細胞においてKras遺伝子ノックダウンを行うとJNK経路の活性化を抑制しつつがん幹細胞性を著明に抑制し、ヌードマウスへの腫瘍創始も抑制した。 以上の結果より、Kras-JNK経路が膵がん幹細胞性の維持において必須である事が明らかとなり、国際誌であるOncotargetに投稿・受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時点で得ていた予備的データを拡大して研究した結果、その予備的データと合致するデータがin vitroで得られたこと、更にヌードマウスでの腫瘍創始モデルをもちいた研究においても、非常に良く、かつ予想通りに近い結果が得られたことから、研究そのものの意義付けが確立し、国際誌にも掲載されることとなった。以上の結果より当初の予定以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた結果から、膵がん幹細胞においてもJNK経路(膵がんに関してはKrasを介した)ががん幹細胞性維持に必須であることが確認されたわけだが、その詳しい分子機構に関しては全く明らかになっていない。また、がん幹細胞から非がん幹細胞へと本当に変化しているのであれば、通常の抗癌剤に対しても抵抗性が減少していると考えられる。 以上の可能性から、まずはJNK阻害薬と抗癌剤を用いた併用療法の効果の確認と、JNK阻害薬による非幹細胞化のメカニズムの解析、がん幹細胞性維持に対するJNKの下流因子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、マウスを用いた実験を行っており、それらの経過観察が長期に渡るため、その飼育料などに必要な点。さらに、新たな実験計画として、先に述べたようにJNK阻害薬の分子機構の探索計画があるため、抗体や遺伝子ノックダウン用siRNAなどの特異的消耗品が多岐にわたって必要になることがわかっていることが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記にも述べた通り、現在継続中のマウス実験の経過観察のための飼育料・技術料として、また、平成26年度発表した研究を更に発展させるための分子機構の探索およびその確認のための抗体や遺伝子ノックダウン用siRNAなどの分子特異的消耗品に使用する予定である。
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